私のそばにいるよりは

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「お嬢ちゃんが『あれは盗品だ』と警察に被害届でも出してくれば対応出来なくもないが…そんな事、したくはないだろう」  そうなると、お義父さんは窃盗犯として逮捕される?  いいえ、そんな事は望んでいない。  じゃぁ、どうすればいいのか。 「新しい持ち主から買い取ろうにも、ちょっと無理だと思ってね」 「お金なら…なんとかします」  40万円なんて大金、実は何ともならない。 「いや、お金じゃなくてね…。うーん、ちょっと待って」  そう言っておじいさんは電話をかけ始めた。  ごめんなさい、お母さん。  ごめんなさい、お祖母ちゃん、大祖母ちゃん。  私の不注意のせいで、人形を手放してしまいました。  電話の受話器を手で覆いながら、おじいさんはこちらに向かって言った。 「あのね、向こうもちょっと事情があってね…やっぱり返品したくないって言うんだよ」  その言葉を聞いて、少しホッとした自分がいた。  もしかして相手が悪ければ「100万円でなら」と言われていたかもしれない。  そう言われてしまった時、私は「わかりました」と答えることが出来ただろうか。 「だったら、一目(ひとめ)。最後に一目だけ会わせてください!」  電話口の相手は快く承諾してくれた。
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