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あれからも、本好きのまま高校生になった私は、
家からちょっと離れた県立高校に入学した。
通学約二時間。何もそんな遠くに行かなくてもって、親にも友達にも言われたけど。私はどうしてもこの高校に入りたかった。
ここの図書委員はビブリオバトルという、本の書評討論が活発で、大会に出てたりもする。
それを知った時、小学校で笠原くんに夢中になって話した事を思い出した。あんな風に、誰かと本について話しあいたい。
そう思って、この学校に決めた。
これからの事を考えると、楽しみでワクワクする。
真新しい制服に身を包み、初めての教室に一歩、足を踏み入れた。
どうやら座席は出席順らしい。
さっと番号を確認して席に座ったはいいものの……
はじめての教室。見知らぬ人ばかり。
ダメ。緊張で心臓ばくばくする。
こういう時は、本を読むのが一番!
持ってきた文庫本を取り出して、早速物語の世界に入っていった。
ガタンッ
文字を追う事に集中していた目線を音の方に見やれば、目の前に大きな背中がある。
大きいなぁ。
お守りのように栞がわりに持ってきたものを文庫本に挟んで、思わず前をジッと見てみれば。その大きな身体に椅子はあまりに小さくて。とても私と同じ椅子のサイズには見えない。
「ふふっ」
なんだか小さな椅子が可愛らしくて、思わず声に出して笑ってしまった。
すると、前に座っていた男の子が、少し窮屈そうに振り返った。
「あ、ごめんなさい」
いきなり笑ったら、感じ悪いよね。
言葉と一緒に少し下げた頭を戻したら、ジイッとこちらを見ている彼の視線とぶつかった。
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