想い出のカード

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「懐かしっ、貸出カードだ」  市の図書館や中学の図書室は、会員証バーコードを読み取って借りる。  でもこれは、紙の貸出カード。本ごとにカードがあって、借りるときに自分の名前を書くのだ。  小学校はこのシステムだった。  貸出カードには、借りる人が名前を書くから、自分の前に誰が借りていたかわかる。  今、手元にあるこのカードにも、私の名前の上に、別の人の名前が書いてある。 〈二ねん一くみ かさはら あつや〉  力強く書かれた名前。  その文字を見るだけで思い出す。  授業中もちょっとしたキッカケで盛り上がり、よく先生に注意されていた。  だけど憎めないキャラクターで、クラスみんなの人気者。  休み時間になれば一番に外に出て、ときには泥んこになって戻ってくる。  『わんぱく』って言葉がピッタリな男の子。  そんな彼が、図書室で本を読んでいるのを見つけた時、私は思わず目を奪われた。  そこには普段とは全然違う。真剣に文字を追う彼の姿があった。
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