ブラフじゃない

２

　恵斗はサークルに行かなくなり、代わりに動画配信の準備を始めた。もともと何曲も作曲していたようだが、歌わせたいボーカルがサークル内にいなかったためお蔵入りにしていたらしい。その中でルルに歌ってほしい曲に早速歌詞をつけ始めた。

「これお前作ったの？天才やろ」

エセ関西弁が出てしまうほどの驚き。恵斗の作った曲に心を躍らされた。電波ソングに近いような女性ボーカル向きなポップな雰囲気で、何度も転調するメロディがとても楽しませてくれる。
　サビのレコーディングが完了すると、その歌を当てはめる動画の撮影に入る。最後に、音源と動画を編集ソフトで合わせると、サビだけ歌った動画が完成する。サビとイントロだけの動画は短い動画を配信するアプリで投稿し、本編は別の動画サイトで配信する。
　なぜか俺は4月下旬のアカウント作成段階から、恵斗の動画配信作業を手伝わされている。理由は、報酬が出るようになったら分け前をくれる、と恵斗に言われたということもあるが、一番は俺がルルに興味が湧いたからだ。