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どれくらい眠ったろうか。
ふと気がついた時、俺は狭い部屋のソファーの上にいた。
ソファーには弾力のある分厚いアウトドア用のマットが敷かれ、その上に素っ裸で羽毛布団をかけて俺は眠っていた。
「お目覚めですか? いかがでしたか? あなた一人のための演劇は?」
相談員の男はニヤニヤ笑いながら俺に尋ねた。
「演劇?」
「ええ。たった一人の観客を喜ばせるための演劇です。『たまご研究会』なんて、意味不明のふざけたタイトルですが、案外、面白かったでしょう? 脚本は半田君が書いたんです」
俺は、あきれた。
俺は、体中、擦りむけて傷だらけになっていた。
肘や肩は打ち身でズキズキ痛んだ。
今にも怒りが爆発しそうになった時、美少女が俺の下着や服を持って現れた。
「ごめんなさい。たかが劇のために裸になっていただいたりして、本当に申し訳ないと思ってます。犯罪よね。でも、でも、私、あなたじゃなきゃ、こんなことできないと思って。観客にあなたを選んだのは私なの。私の、一世一代の大芝居。うそ・・・芝居なんかじゃない。もし、許していただけるなら、私と本気でお付き合いして下さいませんか?」
「えっ?! コレって、劇の続きだろ?」
俺は半分イライラしつつ、心のどこかに僅かな期待を秘めて、そう言ってみた。
「劇の続きじゃないです。真面目にお願いします」
美少女は俺の目の前で深く頭を下げた。
通りがかりの学生役だった男が現れて、こんなことを言う。
「我々の天使、ソラちゃんの恋を、何とか実らせてあげたくてさ。劇団員が一致団結して作り上げた、君とソラちゃんのための演劇『たまご研究会』。僕らからもお願いします。ご迷惑をお掛けしたことは心から謝りますから。どうぞ、ソラちゃんとお付き合いしてあげて下さい」
半田も相談員も、みんな並んで頭を下げるものだから、俺にはもう選択肢がなかった。
「わかりました。こんな俺でよかったら喜んで、ソラちゃんとお付き合いさせていただきます」
わああ――――っ!
狭い部屋に割れるような拍手と歓声が響いた。
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