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初めての変化
親指ほどのアキは、なぜかテロマエロマエみたいな古代ローマ風の白い服を着て産まれてきたけれど、いつまでもそんな服のままじゃいけないと思い、まずは学校帰りに理由をつけて従姉妹の姉ちゃんの子供をダシに、ミニチュアドール売場へ行き、服に靴、鞄、ハンガーやクローゼットなどの一通り必要なものをバイト代をつぎ込んで購入した。
もちろん、従姉妹の姉ちゃんの子供である由真ちゃんにも、可愛いドール人形を買うことになったけれど、それはまあ、ある意味買い物に付き合ってもらったお礼のつもりでプレゼントした。
机の引き出しにアキ専用の部屋をつくったわりには、俺の部屋の中をちょこちょこと歩き回るので、気づかれず踏んづけられてしまったらと思うと気が気じゃない。
だからというわけではないけれど、どこに行くにも自分のポケットに入れて行動を共にするようになっていた。
学校や遊び、ちょっとそこのコンビニまでという短い距離でも、必ず決まって右ポケットに忍ばせている。
食べるものは、基本的には人間と同じで、量だけの問題だ。普通の人間がご飯を茶碗一杯とすればアキは白米を五粒くらい。
おかずだって、めちゃくちゃ細かく刻んだやつを小指の先っぽほどで十分満たされる。
しばらくは、産まれたばかりのそいつが不思議で可愛くてかまっていたくてどうしようもなくて、常に肌身離さずの生活を送っていたが、ある日、目を疑うような出来事が起こった。
その日は何となく寝付きが悪くて、身体の芯から熱が籠り、どうしようもなく下半身が疼いていた。
――くそ、このままじゃ埒があかない――
そう思った俺は、すぐ隣で眠っているアキの存在を確認しながらも、自身の中心へと手を伸ばし、まだ力を持っていないそこを包み込むと、ゆっくりと動かす。
「うっ……くっ……」
声を圧し殺そうにも、今の状態でそれは出来なくて、握っていない方の親指の付け根を口の中へ入れて何とか抑えようとしていた。
でも、どうしようもない日ってあるんだよ――。
「くっ……はぁ……」
梳く手は止まらなくて、気づけば夢中になって動かしていた。いつしかくわえていた指の付け根も玉へと移動させ、転がせている。
すると、その手の動きが誰かによって止められたことにハッとして息を飲む。
視線を泳がせると、隣には信じられない光景が飛び込んでくる。
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