ep15

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 時々立ち止まっては道端に咲く花や変わった建物、古い橋なんかの風景をカメラに収めていく。そんなふうにしばらく歩いた後、ある建物の前で井口さんが足を止めた。 「着いたぞ。平日だからすいてんな」 「えっ、ここですか……?」  そこにあるのは控えめに言ってもボロボロの小屋のような建物で、とてもじゃないけど営業してるようには見えない。というか営業してたとして、何度も来たくなるほど美味しい料理が食べられるとは思えないんだけど……。  俺の不安をよそに井口さんがドアを開ける。……ドア開いてるってことは本当にやってるんだ。  壁にはたくさんのメニューが貼られている。ハンバーグ、カレー、野菜炒め、ナポリタン、回鍋肉、天丼、海鮮丼、ラーメンに蕎麦にうどん……。ジャンルもバラバラで、もうなんの店なのかもよくわからない。 「お前何にする?」 「メニュー多くて迷いますね。何かおすすめってありますか?」 「基本的には何頼んでも美味いぞ。あえて勧めるなら海鮮丼かな」  海鮮丼か。そういえばガイドブックにも大きな魚市場が載ってたな。せっかくなら地元の名産がいいよな。値段も手頃で自分で払うのはもちろん、井口さんに出してもらうにしてもそんなに負担にはならないはず。 「じゃあそうしようかな」
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