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「お前だったら何もらったら嬉しい?」
「そうですね、よっぽど変わったものとかじゃなければ大体なんでも食べますけど……個人的にはこういうマドレーヌとかチーズタルトとか、あとこの煎餅とかも美味しそうですよね」
俺が指差したものを井口さんが次から次に籠に入れていく。いつの間に籠なんて持ってたんだ。そもそも俺の好みを言っただけなのに、そのままそれをお土産にしちゃっていいのかな。
「まんじゅうとかは?」
「まんじゅうって結構難しくないですか? こしあんかつぶあんかって好み分かれません?」
「そうなのか? ちなみにお前は?」
「俺はこしあん派です。俺以外の家族はみんなつぶあん派なので、昔妹が──あ、すみません、関係ない話して……」
また浮かれて……俺の家族とか昔話なんて興味ないよな。
「お前は何か買ってくか?」
「いえ、俺は大丈夫です」
商品を見るふりをしながら会計が終わるのを待つ。
……気を付けなきゃ、ってもう何度思っただろう。今日だけでどんだけやらかす気だよ。絶対に気付かれちゃいけないのに。
店を出てすぐ、こちらを振り向いた井口さんと目が合った。
「さっきの話、続き聞かせろよ」
「いや、わざわざ話すようなことでもないですから……」
「別に笑わせろって言ってるわけじゃねえんだからいいだろ」
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