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どうしよう、聞きたいって思ってもらえてるのすごく嬉しい。でも違うよな? ただの人間観察の延長か、隠されたから気になっただけだよな? だから思い上がっちゃダメだ。
「──本当に大した話じゃないですよ? 俺、妹がいるんですけど、妹が修学旅行のお土産に人形焼きを買ってきたことがあって、でもそれがつぶあんで軽く喧嘩になったっていうだけの話です」
「確かにしょうもねえ話だな。どんなふうに喧嘩したんだ?」
「俺の分は、って言ったら少数派が多数派に合わせるべきとか、想のためだけに1箱買うのはお金の無駄とか、私の手間を考えろとか、数倍になって返ってきた感じです」
「中々に気の強い妹だな」
こんなくだらない話、井口さんにも実際にしょうもないって言われたけど、笑ってもらえてよかった。俺も井口さんの話聞いてみたい。少しぐらいなら俺から質問してもおかしくないかな?
「井口さんは兄弟喧嘩とかしたことあるんですか?」
「いや、俺は一人っ子だからそもそも相手がいないな」
「そうですか……」
しまった、質問選びをミスった。これじゃあ話が広がら──。
「妹と仲良いのか?」
まさか井口さんから話繋いでくれるなんて。それとも自分のプライベートに踏み込まれないように話題を逸らしたいだけかな。
「どうですかね、悪くはないと思いますけど口を開けば喧嘩ばっかりだった気はします」
「お前、俺といる時も割とそういうとこあるよな」
「……誰にでもそういう態度なわけじゃないですよ。それに最近はそこまでじゃなかったと思いますけど」
本当はもっと素直になりたい。気持ちを伝えたいわけじゃないけど、せめてもっと普通にしていられたらいいのに。
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