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「じゃあ友達とか……好きな奴の前だとどういう態度取るんだ?」
「へっ⁉︎ いや、あの……友達も好きな人も変わらないですよ。バレたら困るので……」
「なんでだ?」
「なんで、って……だって気持ち悪くないですか? 同じ男からそんなふうに思われてるの……」
「そうか?」
そりゃあ井口さんはそうかもしれないけど、そうじゃない人の方が圧倒的に多い。
もし井口さんが普通に恋人を作る人だったら俺にも望みはあったんだろうか。そんなこと考えたってどうしようもないけど。
なんか今日はこういう質問多いな。俺が「好きな人ができた」って言ったからなんだろうけど、いったいどういうつもりで……。
もし俺だったらデートでしたいこととか恋人の条件、好きな人に見せる態度なんて、自分が気になる相手じゃなきゃ知りたいなんて思わない。まさか井口さんも──? 帰りまでに教えてくれるって言っていた、俺を連れてきた理由も、もしかしたら。
──バカか、俺は。どうしても今日は自分に都合のいい方に思考が流れていってしまう。
龍也の時もそうだった。「ただの友達」なんてわかったふりをして、なのに結婚の報告であんなにショックを受けて。本当にわかってるなら記憶がなくなるまでヤケ酒なんて、あんなバカなことするはずないよな。
今だってまだどこかで夢見てる。特別な場所で愛の告白なんて、そんなドラマとか少女漫画みたいなこと、俺に起こるはずないだろ。
「おい、聞いてるか? ……疲れたならどっかで休むか?」
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