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「──あの」
「次の信号──」
井口さんが俺をどう思っているのか気になって、考えるよりも先に言葉が出てしまった。だけど同じタイミングで話し出した井口さんに俺の言葉はかき消された。
「ああ、被っちまったな。なんだ?」
「……っ、なんでもないです。次はどこに行くんですか、って訊こうと思って……」
咄嗟にごまかして大きく首を振る。冷静になってみると、なんてことを言おうとしてたんだろう。同じタイミングで井口さんが喋ってくれてよかった。じゃなかったら俺──。
「それならここを曲がった先が次の目的地だ」
井口さんが指差した角を曲がった先には大きな鳥居が見える。そういえば神社があるって言ってたな。
「ここってどんな御利益がある神社なんですか?」
「さあ? 詳しくはわからんが効果はあるぞ。俺のお墨付きだ」
「なんですか、それ……」
「先に参拝してからな」
井口さんのお墨付きってなんだ。そもそも何かわからないけど効果はある、って。まあ俺だってそんな目に見えないものを本気で信じてるわけじゃないけど……。
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