ep15

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 神社を出た後はまた旅館へ向けて歩き出す。時々写真を撮ったり、途中にある店に入ってみたり、気が付けば予定していた2時間はとっくに過ぎてしまっていた。  さっきまでの民家や小さな商店が並んでいた道とは変わって、だんだんと旅館やホテルのような大きな建物が増えてきた。井口さんの話だとあと5分くらいで着くらしい。 「思ったよりも遅くなっちまったな。疲れてないか?」 「大丈夫です。すみません、遅くなったの俺のせいですよね……」  新幹線に乗る前に駅で買ったペットボトルのお茶があったけど、暑さのせいもあってか途中で飲み切ってしまった。俺としてはコンビニとか自販機で新しいお茶を買うつもりで井口さんに声を掛けたけど、たまたま一番最初に見つかった店がカフェで、そこで少し休憩を取ることになった。ちゃんと時間を測ってたわけじゃないけど多分1時間くらいはカフェにいたと思う。井口さんは何も言わないけど、もしかしたら他の予定を削ったりしたかもしれない。仕事を手伝わせる気はないんだろうけど、だからって足を引っ張るのは……。 「お前なぁ、もうちょっと素直に受け取れよ。俺が言う『遅くなった』にはそれ以上の意味はない。お前を責めてるわけじゃねえよ」 「……すみません」 「お前今日謝ってばっかだな。もっと────いや、無理矢理連れてこられて楽しめって言われても無理あるか」  目線を前に戻しながら井口さんが呟いた。バレないように、と思って煮え切らない態度を取っていたけど、もしかして井口さんはずっと気にしてたんだろうか。  何をどう伝えたらいいだろう。疑われずに『楽しい』を伝えるにはどうすればいい?
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