ep16

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 白いシャツに黒いベストと蝶ネクタイ、それに長いエプロンを着けた、よくテレビとかで見るソムリエのような格好をしたスタッフに案内されて席に着く。そこからはライトアップされた中庭が目に入った。  さっき井口さんが呟いた通り、フロアの中は人はまばらで空席も目立っている。週末とはいえゴールデンウィークと夏休みに挟まれたこの時期の金曜日ならこんなもんか。これから来るお客さんもいるんだろうけど、客の数よりもスタッフの方が多そうだ。  スタッフさんから手渡されたメニュー表を開くと、昼間の店ほどではないけれどたくさんのメニューが載っていた。メインディッシュになりそうなものだけでもブランド牛のステーキ、すき焼きにしゃぶしゃぶ。しゃぶしゃぶはお肉だけじゃなくて蟹、鯛、鰤なんかの海鮮もある。それからお造りに魚介の網焼き。サイドメニューも玉ねぎを丸ごと使ったスープとか、美味しそうなものが並んでいる。いつもなら野菜なんて進んで食べようとは思わないけど、こういうところならきっと美味しいだろうな。  バイキングなら一品あたりの量はそんなに多くはないんだろうけど、さすがに気になるもの全部食べるのは無理そうだし、何を頼むか迷うな。  それぞれのメニューの脇にはその料理に合うおすすめのお酒も載っている。日本酒や焼酎などのオーソドックスなものの他、地酒や地ビール、ワインに紹興酒。お酒の種類もかなり豊富。料理から選ぶべきか、それとも飲みたいお酒に合わせた料理を頼むべきか。 「どうした? 食えそうなものなかったか?」 「えっ、逆です逆! 食べたいもの多すぎて選べなくて……」  またメニューに気を取られている間に見られていたらしく、つい顔が熱くなる。昼言われたことを思い出せ。ただ目の前にいるから見えるだけで、見ようと思って見てるわけじゃないって。
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