土曜 21時、いつものバーで

ep16

　その他に何を頼みたいのかを確認した後井口さんがスタッフさんを呼んで、俺の分もまとめて注文してくれた。多分こういうのも井口さんからしたら当たり前のことで、気遣ってるつもりすらないんだろうな。
　……改めて考えても井口さんってモテそうだよな。恋人はいらないにしても一夜限りの相手を探すだって不自由はしなさそうなのに、なんでわざわざ俺なんか脅迫してまで相手させてるんだろう。

　すべての注文を受けた後、スタッフさんが恐れ入りますが、と前置きしてメニュー表のとあるページに手を添えた。どうしたんだろう、何かトラブルだろうか。

「こちらの釜飯なんですが炊き上がりまで30分程かかりますので、よろしければ先に違うお飲み物をお持ちしましょうか？」

　その言葉を聞いて井口さんがすぐにこちらを向いた。

「お前他に飲みたいものあるか？」
「それならステーキに合う赤ワインお願いできますか？」
「俺も同じものを」
「かしこまりました。少々お待ちください」

　スタッフさんが軽く礼をした後厨房へ向かった。行ったことはないからイメージでしかないけど、一流レストランのウェイターって感じの綺麗な動作だ。