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「は……っ? 誰……⁉︎」
「誰って……『タツヤ』だろ? 昨日ヤッてる間ずっとそう呼んでたじゃねえか」
顔も名前も知らないその男は大きなあくびをしながらそう言ってのけた。
悪い夢でも見てるのか。この男が龍也なはずがない。慌ててたからそう思い込んでしまっただけで、髪型だって見間違うほどじゃない。顔も体格も、声も、性格だって何もかも違う。まさかこんなのと龍也を間違えた挙句、身体まで許してしまうなんて──。
誰か嘘だと言ってくれ。
「何そんな慌ててんだ。まさか昨日のこと覚えてねえのか? ちゃんと合意の上だから勘違いすんなよ?」
「合意って……酔わせて取った合意に意味なんか……」
「おいおい、勝手に記憶なくなるまで飲んだのはそっちだろうが。疑うなら証拠見せようか」
向けられたそのスマホに映し出される俺の醜態。喘ぎ声に混じって、何度も龍也の名前を呼んでいる。
「こんなノリ気で無理矢理ってちょっと無理があるんじゃねえか?」
「なんでこんなの撮って……! 消してください、今すぐ!」
「俺が自分のスマホで撮ったんだからどうするかは俺の自由だろ」
「……とにかく俺もう帰りますから」
「あぁ、お前ラブホも初めてだったか。鍵かかってるからドア開かねえぞ?」
ラブホもっていったいどういうことだ。俺は昨日こいつに何をどこまで話したんだ?
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