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「……龍也のことはどこまで聞いたんですか?」
「同じサッカー部でずっと片想いしてたってことぐらいだな」
「名前とかも俺から喋ったんですよね……」
「まあ一応最初は隠してたっぽいけどな。なんとなく気付いて俺がカマかけたら引っかかった感じか」
誰にも、もちろん龍也本人にも絶対にバレないようにしてたのに、よりによって知らないおっさんに喋るとか馬鹿か、俺は。
でもある意味知ってる人にバレるよりはマシかもしれない。どうせ二度と会うこともない人なんだから。
「俺ずっとあんたのこと龍也って勘違いしてたんですか?」
「いや、別に勘違いしてたわけじゃねえよ。ヤッてる間ずっとメソメソ泣いてたから『俺のこと好きな奴だと思っていいぞ』って言ったらそう呼び始めたんだ」
酔ってたにしても限度ってものがある。こいつに限らず、龍也の代わりなんているはずないのに。
「悪いな、大好きなタツヤじゃなくて俺が初めてもらっちまって」
本当に悪いと思ってる人間はそんなふうに楽しそうに笑いながら謝ったりしない。勝ったつもりにでもなってるのかもしれないが、どうせ龍也とそんな関係になれるはずがないんだ。
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