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「なんでそんなことまで知って……」
意地の悪い顔をしながらスマホをこちらに向ける。その画面に見えたのは俺の免許証。
「お前は少し警戒心が足りないな。大事なもんから目ぇ離しちゃ駄目だろ」
図星をつかれ何も反論できない。寝てる間か、それともさっきシャワーを浴びに行った間か。いずれにしても財布やスマホを置きっ放しにしていたのは事実だ。それに今、知らない人とここにいること自体も。
「……何に使う気ですか」
「なんだろうなあ。さっきの動画もあるし、色々使えそうだな?」
まさか自分の身にこんなことが起こるなんて思ってもみなかったから、スマホはロックすらかけていなかった。もしスマホの中身も見られていたら? もし龍也にあの動画を送られたりしたら──。
目の前の卑劣な男を睨みつけ、その手にある紙切れを奪い取る。だけどこいつだけが悪いわけじゃない。何より憎いのは愚かな俺自身だ。
「……約束してください、言うこと聞く代わりに動画も個人情報も悪用しないって」
「ああ、約束しよう」
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