仮装する鶏

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 イベント関係の会社に就職し、遥々東北の田舎から出てきたはいいものの、今の仕事で納得できる成果が出せているかは甚だ怪しいものだ。叔父から、自分の農場にこないかと誘われたこともあったが、田舎の暮らしに辟易していたこともあり上京を決めた。田舎よりは刺激的な毎日だというのは自負できるが、しかしタスクに追われるような毎日に慣れてしまった自分を思うと少しばかりナーバスな感情が首をもたげる。  そんなことを考えていると、スマホの画面が点灯しメッセージアプリが通知を知らせる。最近すっかり疎遠になっていたが、地元の友人からのメッセージだった。緒方智治の名前を見ると、学生だった頃のことを思い出し懐かしくなる。  『大樹、元気か。実は東京に遊びに来たんだ。良かったら飯でもどうだ』  と、久しぶりの連絡だというのに絵文字もないぶっきらぼうな短い文章。ちょうど郷愁に駆られていたところに、懐かしい顔からのメッセージが心のつかえを少しばかり取ってくれた。  「ふっ、ぶっきらぼうなところは変わらないな」  スマホを弄り、少しだけ逡巡する。が、結局快諾するメッセージを返す。既読の文字だけがつき、どこで落ち合うかはこっち任せのようだった。  (まあ、こっちに住んでもうしばらく経つからな)  とりあえず適当な店を決め、地図アプリのスクリーンショットを添付し送信する。しばらくし、再びスマホが軽快な鳴き声を上げる。  『わかった』  本当にぶっきらぼうだ。だが、そこが彼のいいところでもあった。
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