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建物を出て塀に向かって歩き出す。
建物に面してない裏側は、さすがに建物の上からでも見渡すことが出来ない。
適当に歩き、塀と塀の隙間が大きめな境目の辺りに腰を下ろす。
はあ…
見上げれば空は相変わらず雲ひとつない。
3ヶ月前も半年前も、何故だか俺達がここに集まる日はこんな空だ。
振り向けば塀の隙間には草、草、草…
あんなにも土と石と岩の欠片しかなかったくせに…
風で草が揺れる。俺の苦々しい顔を見て、あいつが嘲笑っているかのようだ。
本当に腹立たしい
先に行くのなら行くと言え!
せめて何が起きてるのか、起きるのか、言えなかったか?
そうしたら、俺達にも出来る事が何か……
何度思い返したかわからない。
でも何度思い返しても、何故あいつだったのか、何が起きたのか、糸口さえも掴めなかった。
思い返したくもない光景が浮かび上がってきた時、足音が聞こえた。
?!
以外な人物の登場に僅かな緊張が走る。
俺は立ち上がりながら
「どうした?!」
と様子を伺い歩き出す。
しかし、表情も変えずに、相変わらずの威厳と余裕を撒き散らしながらこちらへと向かって来る。かと思ったら、俺の傍まで来ると塀にもたれかかり座りだした。
この男がここまで来るのだから、急を要する何かかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
仕方がないので俺も座り直す。
少しの間何もない空間を見ていたアーロンがようやく口を開く。
「いつまでそうしているつもりだ」
???
聞き間違えたのだろうか?
突然現れ、俺の問いに応えもせず沈黙していた男の言葉とは思えない。
念のため周りを見渡してみたが、やはり俺以外は誰もいない。
「…は?」
そう返す以外の答えが見付からなかった。
すると、ちらりと俺の顔を見て、
「はあ~~」
と、今日何度ついたかわからない俺のものよりもずっと深いため息をつき、続いて、
「ちっ」
と舌打ちをする。初めて見た奴ならこの世の終わりを思わせる眼光だ。
そして、またどこを見てるともわからない目線で話しだした。
「あの時、お前はあいつの顔を見たか?」
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