笑顔の理由

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笑っていた?だと? どうもこいつと話してると耳がおかしくなるらしい。 あいつはあの後たった1人地上に出て、誰も来ることのないこの広場まで歩き、何だかわからない力で石の雨に打たれたんだぞ? どこまでを知っていたのかは知らんが、あの状況で何かを決断したんだ。おそらく命を懸けた何かに向かって行く事は覚悟していただろう。 そんな時に笑っていただと? 「……は?」 尋常ではないその眼光を使うせいで、お前の目はおかしくなってたんじゃないのか?等と思っていると、 「…そうだな。例えるなら、お前が何か失敗した後、また自己嫌悪からこの世の終わりのような顔をするぞと笑っていた時のような…」 ……は?何言ってんだ?こいつ 「あるいは、お前が必死になって集めた情報が間違っていたと気づき、真っ青な顔で立ち尽くしているのを見て笑っていた時のような…」 「ちょっと待て!なんの話だ!」 「あの時のあいつの顔だ」 「は?あいつが俺のこと面白がって見てたのは知ってる!けど、自分の人生が終わるかって時に、そんな顔するか!」 俺のことを面白がってたあいつは、それでも俺と視線が合うと、あからさまに笑うのをやめ、必死に堪えていた。 あり得ない 「知らん。あいつが何を考えてるのか等理解出来たことはない」 アーロンとあいつは、俺達と出会う前から共に旅をしていた。あんなのと二人で旅を続けるなんて信じがたいが、そんな能力を持ち合わせたこの男が理解出来ないのだから、俺達が理解出来ないのは至極当然のことだ。 「ただ…あいつはあの時、そんな顔をしていた。それだけだ」 「旅の途中俺を馬鹿にしてたのとは状況が違う。何故笑える…」 「…さあな」 …だって、仲良しな仲間達とは程遠かったにしろ、あんな形で急に別れることになったんだぞ? しかも、何故だかはわからないが、おそらく何らかの選択を、あいつ1人ですることになって… あいつが消えた後、俺達の一歩たりとも動けなくなった足は解放され、石と岩の欠片の広場が出来たのと引き換えに、世界は静けさを取り戻した。 …どう考えたって、あいつのせいなんだろう。自分を犠牲にすることで、俺達を、この世界を… 「…そんな…世界の平和の為にとか考えるような奴じゃなかっただろう…」 「…まあ、あいつが人生で自己犠牲について等考えたことはなかっただろうな」 絶対人選ミスだ 「人の何倍もやりたい事があったくせに…誰よりも毎日を楽しんでたくせに…」 今でも鮮明に思い出せる。いつも子供のように笑っていた。 子供のように何でも楽しみ、楽しい事を見つけるのも上手かった。 「…俺には、あいつが生き急いでいるように見えた」 遠い記憶を辿っているかのように、視線を彼方に移しながらアーロンが言った。
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