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「俺があいつに出会った時、あいつは大人達相手に賭けをしていた。その金で行きたいと思った所へ行き、好きな事をし、金がなくなったら賭けをする。そうやって暮らしていたようだった」
どの位前の事かは知らないが、俺達と出会う前にすでに短くはない時間共に旅をしていたようだったのだから、まだ少女と呼ばれる位の歳だったはずだ。
「まだ子供だろ?どんな生き方してきたんだよ。ってか、勝率悪すぎるだろ」
大人同士でさえ、色んな駆け引きや、汚ない手を使い、新参者が勝てることは少ないはずだ。
「あいつは、ほぼ負けたことがない。俺と出会ってからしか知らんが」
?!
「なんで!どんな手を使ってんだよ」
としか考えられない。
「別にどんな手も使ってない。獣並の直感力があるだけだ」
直感力…俺が最も欲し、しかし絶対に無縁なものだ。
「基本的にあいつは直感力だけで生きていたようだった。その日したいことをし、行きたい所に行く。予定していた計画や天候は関係ないようだった。その時そう思ったらやる。それがあいつの生き方で、ぶれる事はなかった。おそらく最期まで」
俺のような凡人からしたら信じられない生き方だが、思い当たる節はいくらでもある。そのせいで数え切れない被害を被ってきたのだ。
…おそらく最期まで…
どんな駆け引きも汚ない手も通じない直感力
「それに従うことは…あいつらしく生きることかもしれない。…けれども、それを選択しないという生き方だってあっただろう?」
「ないな」
即答だった。
「あいつがあいつらしく生きられないこと。それはもうあいつが生きている意味をなさない」
とても…説得力があった。俺でもそう思う。
「あいつは、なんとなく自分が長命ではないことを悟っていたのではないかと思う。だからこそ、お前達に何を言われようと自分の意見は曲げなかったし、周りの状況等関係なくやりたいことをやっていた。1日を無駄に過ごしていたあいつを見たことがない」
数々の苦々しい思い出と共に、あいつの目線で考えると、そういうことだったのかと変に感心する。
「真実はわからん。が、あいつはあいつの生き方を全うした。俺はそう思うことにしている」
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