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即席チーム
そんな依頼が舞い込んだ翌日。
「流石は渋谷。 外と断絶して10年は経つ癖に、相変わらず人が多いぜ」
小太郎は香道の指示の元、東京の中心ともいうべき地。
渋谷のスクランブル交差点へと降り立っていた。
他二名。
「なっ、雪音」
「うるさい、話しかけないで。 気が散る」
幼馴染みでもあり、今回の依頼人でもある柊雪音、と。
「まーだ怒ってんのかよ、お前。 そういうとこはガキの頃から変わんないよなー」
「ま、まぁまぁ小太郎さん。 ここは抑えて抑えて。 確かに嫌な人ですけど、一応。 い・ち・お・う! お客様なので」
あの高尾山侵食事件後からちょくちょく小太郎の世話を焼く献身的な少女。
第二分室戦闘員、荒巻花音と共に。
「……ちょっとあなた、さっきから何なの? 喧嘩売ってるわけ?」
「別にそんなつもりありませんよ~。 気のせいかと~」
「こいつ……」
「なんですか」
「はぁ……」
花音が合流してからというもの絶える事なく続くこのいがみ合いに、流石の小太郎も辟易。
何度目かの大きな溜め息を吐いてしまう。
「お前らいつまでやりあってんだよ、疲れる……。 ほら、さっさと行くぞ。 ここら辺の見廻りと聞き取りをすんだろ?」
「あっ、そうでしたね! では行きましょう、小太郎さん! お手伝いします!」
「チッ、ムカつく女。 よくも男に恥ずかしげもなく媚売れるもんよね。 同じ女として恥ずかしいったら無いわ」
「なにか?」
「別に」
いい加減仲良くしてくれ。
小太郎が望むことは、ただそれのみだった。
「よう、おっさん。 商売繁盛してるか?」
「あん? 何言ってんだ、兄ちゃん。 このご時世、しかも今の東京じゃあ儲かるも糞も……って、お前もしかして小太郎か!? おいおい、久しぶりじゃねえか! この一年どこほっつき歩いてたんだよ、てめえ! 死んだんじゃねえかと皆心配してたんだぜ!?」
小太郎とわかるや否や態度を急変したこの恰幅の良いバンダナの男は、メイヘム=オールド。
ここ、新渋谷区で居酒屋を営む顔役の一人である。
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