三割程の本気

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三割程の本気

「はは……勝っちゃった。 嘘みたい」 「まさか本当に勝てるなんて……」  と、二人が正真正銘命の恩人である小太郎の背中を眺めていた最中。 「う……」  ドサッ。 「小太郎ちゃん!?」 「小太郎さん……!」  いきなり倒れた小太郎の元へ、花音が駆け寄り抱き上げる。 「小太郎さん、大丈夫ですか!? 小太郎さん!」  花音が必死で呼び掛けるが、小太郎は無言。  まるで死んだように。 「小太郎さん、お願いだから起きてください! 私はまだちゃんとお礼も言ってないのに、勝手に逝かないで! デートするんじゃなかったんです!? だからお願い……目を開けて……」  花音がボロボロ涙を落としながら、喚き散らす。 「花音ちゃん……」  そこでふときららがある事に気が付いた。 「ん……? 待って、花音ちゃん。 もしかして寝てるだけじゃない、これ」 「へ……?」  きららに言われ落ち着きを取り戻した花音は、小太郎の口許に耳を近づける。  すると微弱ながらも寝息が微かに……。 「むうぅ! もう小太郎さんったら! 紛らわしいんですから!」 「ま、まぁまぁ。 落ち着きなって、花音ちゃん。 死んでなくて良かったじゃん」 「それはそうですけど……」 「ふぅーん? そんなに心配だったんだ、彼のこと。 へぇー」  恋愛なんてしそうも無かった奥手な部下の気持ちに気付いたきららがにやけ顔を浮かべていると、花音は顔を真っ赤にして。
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