虚空核 【テラーコア】

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「それではまず、私が提案した方針。 探索を一次中断して帰投したのち、体勢を整え第二、第六分室の共同作戦として再度探索をする。 これに賛成の方は挙手を」  手を挙げたのは花音のみ。  つまり他三名はもう一つの案を選んだという事になる。 「……理由をお訊きしても?」 「理由としては二つだよ。 一つはこのまま侵食領域を放っておいたら、民間人に被害が出る可能性が高い。 特にこの侵食領域はおかしいからね。 早急に対処しないとそれこそ取り返しがつかなくなるかもしれない。 それと」 「出口よりも虚空核(テラーコア)の方が近いからだ。 進むも退くもカリオンに強襲される恐れがある以上、距離が近い方を選択するべきだろう。 その方が生還率が跳ね上がる」  二人の言い分は恐らく正しい。  否定する部分は殆んど皆無だと花音自身も納得している。  が、それはそれとして、小太郎の身体が心配な花音は、子供がねだるような上目遣いで── 「小太郎さんも同じ意見なんですか……?」 「ごめん、花音ちゃん。 俺も出来るなら被害が出てない内になんとかしたいと思ってる。 カリオンのせいで誰かが犠牲になるなんて耐えらんねえから」 「……はぁ、仕方ありませんね」  ため息を漏らした彼女はそう呟きながらライフル片手に立ち上がる。    そしてテラーコアが観測された場所。  高尾山中腹を見上げながらこう告げた。 「ではさっさと片付けて帰りましょうか。 小太郎さんの為にも」  
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