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嫁とたまご
「子供出来たみたい」
仕事が終わり家に帰るとすぐ、嫁が突然そう言った。長い不妊治療の末にようやく授かることが出来たのか。本当に嬉しかった。
だが、普通そう言う時はエコー写真を渡してくるんじゃないのか?
嫁の手には一つのたまごが乗っていた。
「え。なにこれ」
「なにこれって。うちらの子」
何もふざけた顔はしてなかった。凄い真剣な顔だった。
「そっか。とりあえず暖かくしないとな」
「ふふ。なんてねー。冗談。私おかしくなったと思ったでしょ。私のこと愛してるからって全て受け入れたらダメだよー」
おちょくられた。そう言いながら、嫁はキッチンに立った。
冗談にしては笑えないと思っていたが、嫁の辛さを分かっていたから何も言わなかった。
嫁は手に握られていた、たまごを割ってオムライスを完成させた。
「『いただきます』」
しばらく食べていると、嫁が言ってきた。
「新聞見る?」
「あ、うん。ありがと」
一ページ目を捲ると、そこにはテープで貼られていた一枚の写真があった。
エコー写真だった。
嫁を見ると、ピースサインで泣きながらこっちを見ていた。
俺も泣いて喜んだ。鼻水が止まらなかった。
「えへへ。サプライズ大成功」
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