卵をぶん投げたい

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 僕と彼女の距離は2mほどだろうか。放課後、誰もいない校舎3階の廊下で向かい合って立つ僕達。 「最初はこんぐらいでしょ」  彼女はそう言って距離感を確認する。鶏内(かいち) 穂香(ほのか)は成績優秀で優等生だ。一年の学級委員に始まり、二年の時には生徒会長、三年生の高校全国模試ではトップクラスの順位に入るなど、教師陣からの信頼も厚い。人柄もよく、おまけに容姿端麗といった、出来すぎ高校生だ。僕はというと平凡なのでさして語ることはない。彼女と比較するのも面倒だ。   「じゃ、やろうか。キャッチボール」  鶏内はそう言って右腕を僕に突き出す。その手に握られていたのは、生卵だった。  僕みたいな凡人には理解が追い付かない状況だった。
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