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一目惚れした相手は大学の学部も、バイト先も、暮らすシェアハウスまで一緒。
奇跡のような理想の顔と声で微笑んでくれるのに。
軽々しく手を振って、いつだって
「また会えたね」
声を掛けてくれるのに……。
「ん?」
そんなキョトンとする顔だってやっぱりカッコいい。
でも、同じ女で、その恋は叶わない。
「おっもしろ〜!」
「っくないっ!!」
笑う佐那さんの言葉にカブせると、先輩はケタケタと笑った。
「見た目は男だし……ダメ?」
「ダメに決まってます!!」
「今の世に乗り遅れてない?」
「じゃあ、私のこと好きなんですか?」
「うーん……」
「ほらぁぁぁっ!!」
手元にあったタオルを投げると、先輩は軽々キャッチして笑う。
「好きなだけ続けて」
「ですねぇ」
佐那さんと倖人さんももう気にしないでただ食事を楽しみ始めた。
「先輩!実はお兄さんが私に一目惚れとかしててその気持ちを代わりに伝えてるとか?」
「えー……」
ヤケになって言ったそれをガチテンションで返される。
「もういいですっ!!」
「いやいやっ!そうかもよ〜!」
全く気持ちのこもっていないこの言葉を信じられるはずがない。
「もうヤダーーーっ!!」
私の複雑な乙女心は今日も軽く笑い飛ばされている。
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