夢の超特急「ひかり号」

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夢の超特急「ひかり号」

 夢の超特急「ひかり号」  このフレーズ、聞いたことありますか? 昭和35年頃、東海道新幹線が開通する前のキャッチフレーズです。当時は、東京から大阪まで東海道本線(の現在来線)の特急こだま号が6時間半かけて走っていました。その後、新幹線が開通して、ひかり号は時速250キロ、大阪までの所要時間は3時間15分に短縮されました。当時としては、まさにだったのです。  しかし、今はどうでしょう? リニアモーターカーが開通すれば2時間です。  昭和30年代、「未来はこうなる」というSF要素と夢満載の小冊子がありました。  それによれば、一家に一台のコンピューターがあり、お金がなくなり、持ち運びできる電話機や自動運転の車が走る時代etc…   一家に一台のコンピューター?信じられませんでした。なにしろ当時のコンピューターは、大型冷蔵庫のようなでかい装置で、テープレコーダーみたいのがぐるぐる回転していましたから。あんな化け物みたいな機械が狭い家に入るはずがない。入ったとしてもとんでもない費用がかかる。今の若い人たちには想像もつかないでしょう。  今は当時の夢が実現しているわけで、今の人々はそれが当たり前だとおもっている。国民一人ずつにコンピューター(パソコン)と電話ラインカメラ機能を備えたスマートフォンがあり、電子決済があり、数百の言語を解するAIがある。自動運転の車が走り、AIは小説や論文を書く。  前置きが長くなりましたが、ここから本論。  一つの小説プロットを提案してみます。  特急列車の中で殺人事件が起きた。犯人は暴走した車内販売用AIロボット。乗務員がスマホで警察に連絡し、犯人拿捕に成功。さて、AIに殺人罪は適用されるのか。AIは人間ではないので適用されません。罪をかぶるのは、AIを作った技術者か、AIを管理している販売会社か、あるいは販売ロボットにいたずらを仕掛けた乗客か。ちょっとした問題提起ですね。  このシチュエーションは60年前ならSF小説として通用したと思いますが、現代ならどうでしょう。SF要素が全くないので、平凡なミステリのジャンルかな。  昔のSFアニメやSF映画の登場したツールのほとんどは実現してしまいました。タイムマシンですら、NASAは研究をしています。理論上は時間旅行は可能だそうです。  エイリアン地球外生命体探索も真面目に取り組んでいますよね。日本でもUFOが攻撃してきたらどうするのかと、国会で答弁している光景もありました。60年前にそんなことをやったら、大ヒンシュクの烙印を押されます。  SFジャンルは、不人気だそうです。不人気な理由はいろいろありますが、そのひとつに使い古したクラシックなツールを扱っている点もあるでしょう。しかし、これからは、LGBTQものも含めて、AI同士、人間対AIのドラマが主流になっていくのでは想像しています。また舞台も地球上でなく宇宙ステーション内、火星、月面などに移っていくと思います。かつて、SFの舞台だった惑星や時間などの特異な環境は特異でなくなり、また特異な感情の交錯を産みだす新しい文学の誕生につながるかもしれません。  不人気なSFは姿を変えて近未来への橋渡しなるのではと、思うこの頃です。
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