29人が本棚に入れています
本棚に追加
ご飯を食べ終えたあとは、学校へ行く準備をする。今日はK-POP風の服装にしたいと昨日から考えていた。トップスはグリーンの少しオーバーサイズのスウェット、ボトムスはグレーのチェック柄のプリーツスカート。ヘアアレンジはお団子かな。
鏡を見て笑顔の練習。大丈夫、今日も私はカワイイ。水色のランドセルを背負って家を出る。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい! 気をつけてね」
ママに手を振って私は玄関のドアを開けた。通学路を少し歩いたところで、友だちのミッちゃんが待っていてくれた。
「おはよう」
「おはよう。英美里ちゃん、今日もカワイイ。なんか大人っぽいし」
「そうかなぁ? 今日はさ、K-POPを意識したんだよね」
「へー、K-POPかー。似合ってる」
「へへっ、ありがとう。ミッちゃんもカワイイじゃん」
「そう? ありがとう」
適当に褒めてあげる。具体的にどこがカワイイのかわからないけど、人間褒められて嫌な気はしないのだ。ミッちゃんは私が一番仲よくしてる子だから、大切に扱いたいと思ってる。
視線の先には制服を着た女子中学生たちがいた。楽しそうに友だちと一緒に笑っている。
「来年は中学生かー。なんか、時間経つの早いねー」
私がそう言うと、「わかるー」とミッちゃんは同意してくれた。
「なんかさ、ちょっと前まで小三だった気がするんだけど、いつの間にか小四になって、この前なんて小五だよ? 早っ、て思った」
彼女は当たり前のことを言う。そりゃそうでしょ。一年ずつ年を重ねていくもんじゃん。なに言ってんのこの子、と思ったがそんなことは口には出さない。それが信頼関係ってやつなんだと思う。
学校へ着くと、友だちが私の机を囲む。カワイイ、英美里ちゃん今日も超カワイイ、などと言われて照れながら笑顔を作る。日頃から言われていることだけど、カワイイと言われると当然嬉しい。だから自然と愛想もよくなる。
クラスで一番のイケメンである瑛士くんもチラチラとこちらを見ていることに気がつく。私は更にニヤニヤが止まらなくなる。
あー、人生って楽しい。皆からチヤホヤされて、カワイイカワイイと褒められて、なんて楽しいんだろう。私は一番でいたい。誰よりも可愛くいたい。
そう思っていたのに、私の立場はある女によって一変した。
最初のコメントを投稿しよう!