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その日の帰り、私たちは一緒に帰ることになった。私とミッちゃん、それに仲のいい友だち二人と唐沢愛。彼女は帰る方向が違ったみたいだけど、そんなの関係がなかった。私が仲よくしてあげているのだから、私に従うのは当然だ。
下校途中にある公園に寄って、ベンチに座りながらおしゃべりをする。二人掛けのベンチが二つあるから、私とミッちゃん、それに友だち二人がベンチへ座る。唐沢愛は立ったまま。
「唐沢さん、立ってるのしんどいでしょ? 座っていいよ」
「え、うん、ありがとう」
そう言って地面にしゃがみ込む彼女。
「いやそうじゃないって。正座でしょ? 当たり前じゃん」
え? と、戸惑いながら彼女は地面に膝を付けて座る。ズボンには砂が付いているはず。それを見て自然と笑みが溢れる。
「私思ったんだけどね、唐沢さんになにかあだ名付けてあげようかなって」
「あだ名? でも、みんなからは『愛ちゃん』って」
「いやいや、そんなのダメだよ。私が決めてあげる」
「よかったじゃん! 英美里ちゃんに付けてもらったら絶対いいよ」
「……じゃあ、お願い」
「ふふふ。じゃあどうしようかなぁ。あ、私ね、毎朝卵かけご飯を食べるんだけど、カラザって知ってる? 卵に入ってる黄身と白身の中にある白い糸みたいなやつ」
「カラザ?」
「私、それ気持ち悪いから毎回取ってるんだけど、でもママは『カラザは栄養満点なのよ』とか言うのよ。だけどやっぱり気持ち悪いし。それでさ、唐沢さんとカラザってなんか響きが似てるでしょ? だからカラザってどう? カワイくない?」
「カワイイ! いいじゃん! カラザ」
ミッちゃんは満面の笑みで同意している。
「……え、でも」
「なに? 嫌なの?」
「そういう、わけじゃ」
「皆もいいって思うでしょ?」
私がそう尋ねると、二人も顔を引きつらせながら頷いた。
「ほら。じゃあ決定ね。カラザちゃん、これからよろしくね。大丈夫、卵のカラザみたいに私たちは捨てたりしないから。あははは」
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