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気分がよかった。日に日に元気がなくなっていく唐沢愛の姿を見るのが本当に楽しくて。毎日のように彼女の元へ行き、いじめてあげている。転校してきたばかりの頃はあんなにチヤホヤされていたのに、今は人が寄りつかなくなっていた。
私たちは彼女がなにかミスをする度に怒り、頭を下げさせた。これは教育なんだ、躾なんだ、そう思いながら。初めの頃は少し躊躇していた周りの友人たちも、今では私にならって彼女を躾ている。仲間意識みたいなものを感じて愉快な気持ちになった。
「ねぇカラザ」
放課後、いつものように公園へ寄り道をする。幸いなことに公園には人がほとんどいなくて、犬を連れたおじいちゃんが散歩をしていたぐらいだった。
私たちは当たり前のようにベンチに座り、そして唐沢愛だけは地面に正座をさせた。
「今日さ、瑛士くんと話してたよね? なんで?」
「……え、あの、聞かれたから」
「なにを?」
ミッちゃんは語気を強めて言う。その気迫に圧倒されたのか、唐沢愛は口ごもりながら答えた。
「……好きなアニメのこととか」
「は? なにそれ。あんたさ、自分がカラザだってこと忘れてない? カラザが人間の男の子と普通に話していいと思ってんの?」
ミッちゃんは私が考えていることをそのまま口にする。
「……え、あの」
「謝って。早く謝って」
「ご、ごめんなさい」
「頭が高い。いつもやってるんだからわかるでしょ? バカなの?」
地面に正座をしている唐沢愛は、両手を付いて顔を下ろす。
「おでこもちゃんと付けて」
唐沢愛は土下座をしている。そんなことをするほどの内容でもないのに。私は彼女の姿が可笑しくて、笑いを堪えるのに必死だった。
「いいよ、許してあげる。そのままね」
私は右手で地面から砂を掴み、それを皆の手のひらに渡した。砂が付いた手のひらを唐沢愛の頭に乗せて、ゴシゴシと撫でてやる。ペットを可愛がるみたいに。
「じゃあ皆も」
クスクスと笑いながら他の子たちも私に続いた。
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