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「いいよ顔上げて」
唐沢愛の頭には白い砂が付いていて、小さな黒い石なんかも交ざっているに違いない。ボサボサの髪の毛を直させることなく、私たちは笑い合った。
楽しい。愉快。爽快。目障りな人間は皆こうしてやるんだから。
「じゃあそろそろ帰ろうか」
私が言うと皆も立ち上がってランドセルを背負い始める。そのとき、唐沢愛が持つランドセルに付いていた手のひらに収まるぐらいの大きさの巾着袋が目に入った。
「それ、気になってたんだけどさ、中なにが入ってるの? そのババくさい巾着袋」
彼女は自分のランドセルに付いた巾着袋を触りながら、「これは」と口ごもる。
「ちょっと見せてよ」
「え、でも、これはおばあちゃんからもらった大切なもので、中には大事なものが入ってて」
「いいじゃん、ちょっと見るぐらい。早く」
「……でも」
「いいから見せてって言ってんでしょ!」
ミッちゃんが勢いよくその巾着袋を引っ張って引きちぎった。
「あ、取れちゃった。まあいいっか」
「待って! 返して! それ大事なやつだから、お願い、返して!」
「うるさいなぁ、ちょっと見るだけなんだからいいでしょ」
ミッちゃんは私にそれを渡してくる。他の子は唐沢愛を取り押さえていた。いい連携だ。
私はその茶色い巾着袋を両手で開けてみる。その間も唐沢愛はずっとわーわーと騒いでいた。
出てきたのは白い物体。手のひらに収まるぐらいの小さな人形だった。白い糸で体全体をぐるぐるにされていて、顔もなにもない。
ただ、その白い体の裏側には黒いペンで様々な漢字が書かれていた。
「なにこれ、りん、ね、てんしょう? いんがおうほう、むげんじごく? え、なにこれ」
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