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卵を取り、机の角で何度か軽く叩いてみる。ヒビが入った隙間に親指を入れて左右にゆっくりと開いていく。殻はうまく割れて、中からドロッとした白身と黄身が現れた。
それを器に落としたあと、私は箸で白い紐のようなものを取り除こうとする。
「なにしてるの?」
ママは私の行動を見て、少し不満そうな声を出した。
「だって、これ気持ち悪いんだもん」
「それはね、カラザって言って凄く栄養のある部分なのよ。それも食べなきゃ」
「えー、嫌。気持ち悪いもん」
私はママの言うことに逆らうようにうまく箸を使った。先端でそのカラザってやつを摘んで、殻が入った器に捨てる。
「もう、すぐ好き嫌いするんだから」
「まあまあ。英美里だって嫌いなものぐらいあるさ。気持ち悪いと思うものを無理に食べなくてもな」
パパは優しい。いつも私の味方をしてくれる。
「ほんとに、あなたはいつも英美里の味方なんだから」
「えへへへ」
私が笑うと、パパも満面の笑みを浮かべた。
ママは鼻息を荒くしながら卵を溶いていく。カッカッカッと黄身と白身が混ざっていくのがわかる。その中には私の嫌いなカラザも含まれているようだ。ママは溶いた卵を白いご飯の上に落としたあと、少量の醤油を垂らす。ねぎも少し入れて、最後にごま油を追加した。それを美味しそうに口に運ぶ姿は、幸福そのものだった。
私もそれを真似てみる。卵が口の中に広がり、醤油の風味が舌に伝わってくる。卵かけご飯最高。それは私たち家族の毎朝のルーティンだ。朝は必ず卵かけご飯を食べる、それが日課だった。
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