恐怖

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「あの、えっと、ロペス」 「ん?」 楽しそうに俺の耳や首にキスしたり噛んだりして来るロペスから身を捻って逃げようとするが、身体が言う事を聞かない。むしろびくびく震えてこれじゃあまるで感じてるみたいじゃないか。 主人公って大変。 「やめ、やめて下さい」 「うん、そうだね」 こいつ人の話聞いてない。 段々ロペスが俺に近づいて来て、本棚と距離が縮まって行く。俺が本棚に手をつくとロペスが上から指を絡めて来た。 「っ、っ…ロペス、やめ、ぇ…」 耳の中をぐりゅぐりゅと舌が責め行ってくる。ごめん、前世で触手プレイイラスト見てグヘグヘ言って。あの子もこんな気持ちだったんだな。 腰がかくかくしてどんどん腕に重心が傾く。 「ろぺすっ」 「うん。かわいい、ヨハン」 耳元で蕩けるような声で、『かわいい』そう囁かれてお腹の奥がもったりとした熱を持ち始めた。 「あ、ぁやだ、待って」 俺のYシャツの中に手を入れて、すりすりとお腹をさすって来る。その手つきはなんだかアダムと似ていてぞくりと背筋が震えた。 「ヨハン、仮面取るよ。仮面。取るからね」 「だめっ、だめ、だめぇ…」 俺は片手を本棚から離して仮面の後ろの紐を手で隠す。 「…、どかして?ヨハン、手。邪魔」 冷める様な声でそう言われて今度は違う意味で背筋が震える。 「ダメです、無理です、やめてください」 それでも俺はちゃんと断った。どんなに怖くても。 「なんで俺はダメなの?」 「…みんなダメです。」 「だってアダムには見せたでしょ?」 ……なんで知ってるの?怖いんですけど。 「ねえ、俺透視魔法が使えるんだ。」 急なカミングアウトに俺は、ぶわっと全身の汗を吹き出した。 「な、なん、なっ」 「これを知ってるのは国王だけ。あと、今言ったからヨハン。俺3家系から出た妾の子と国王の間に生まれたんだ。俺を産んだ後すぐ実の母親は事故で死んだけど。でもやっぱり3家系よりも血は薄いから透視するくらいしかできないんだけどね。だからヨハンの顔なんて見ようと思えば見れるんだ」 見ようと思えばって事は、見てないってこと……?なんで? 「でも見てない。だって、ずるいでしょ?魔法使って勝手に見るだなんて。だから許可して。5年間我慢してるんだよ。君の顔が見たくてたまらないのに我慢してるんだ。」 ……え、すっごい良い奴じゃんロペス。 『仮面を外す』 『仮面を外さない』 選択肢が出て来た。…そんなの、決まってるよ。こんなに言われて、外さない奴なんていない。 俺は考える間もなく選択肢を選んだ。 「……見たいなら、もっと仲良くなってください」 後ろを見上げて、俺はそう言った。 「………ふふ、言うと思った。少しくらい同情してくれてもいいのに。」 断られたのに嬉しそうに笑うロペス。 「それじゃ、ご飯作るから待ってて。」 そう言って彼は握っていた俺の手の甲にキスをして台所に戻った。 ………あれ?て言うかロペスって俺の事犬かなんかかと思ってるのかな。いや前から知ってるけど、再確認するとちょっと悲しい。 その事を悶々と考えすぎて食べたご飯は見た目は超良かったけど無味無臭だった。風呂に先に入れと言われて風呂にも浸かったけど、デカくて落ち着かなかった。その後風呂を出て、ロペスが入った隙にエロ本とか探したけど全然出てこなかった。出て来たのは数1000枚入った写真アルバム。現像の魔法だ。 ちなみに、全部俺。………えっストーカーの方?犬との5years ago的な?いや意味わからんて。 ロペスが出て来て、そっちに目配せすれば半裸だった。 ……良い筋肉しやがって。 あいつは180から185くらいじゃないか?それにイケメンフェイスとかズルじゃん。まあそれはアダムとかイヴにも言える事なんだけど。 「ねえヨハン。頭拭いて」 頭を俺に突き出してにこにこ笑う。セットされてないさらさらとした髪は新鮮だ。 ロペスの肩にかかってるタオルを取ってわしゃわしゃと髪を拭いてやった。拭き終わればロペスは嬉しそうに水を飲んで俺の隣に座る。 「今度は何読んでるの?」 「物語」 「そう」 会話はそれで終わったけど互いに続けようとは思っていなかった。なんか無言だけど気まずいんじゃなくて心地良い感じ。 「ロペスは、キスしたことー…」 「ねえヨハン、先輩って呼んでよ。この一年だけ」 「……」 俺の言葉を遮ってそう言うロペス。めんどくせえなぁ、良いだろ別にロペスで。 「…ロペス、先輩」 「可愛いね先輩呼びって」 「馬鹿にしないでください」 「してないよ」 にこにこ笑いながら流されて俺は聞きたい事を聞いた。 「先輩はキスしたことありますか」 「…、それはいいけどやっぱり先輩は無しでいいや。可愛いけど、特別感ないし」 本当めんどくさいな、呼べって言ったり呼ぶなって言ったり。 「で?何だっけ?キス?」 「はい」 「どうしてそんなこと聞くの?」 服を着ながら逆に質問された。どうしてって言われても… 「今キスシーンだから?」 「なんで疑問系なの」 おかしそうに笑うと一呼吸間をおいて口を開いた。 「あるよ。可愛い女の子と。数えきれないほど」 「…え」 いや、まあそうなんだろうけど。でも、ちょっとズルくない?俺もシャルとかとキスしたい。えっちな事したい。 「…………、じゃあ聞くけど。ヨハンはあるの?」 そう言われてちょっとたじろぐ。昨日したなんて言ったらこの人はどう思うだろうか。しかも自分の弟と。 俺がもごもごしているとロペスはじっとこっちを見て、 「いつ、どこで。誰としたの」 と俺の腕を掴んでくる。したって言ってないのに、俺の挙動でバレてしまったのかロペスは食いついて来た。 「っ、ひ、ひ、秘密です…」 「……俺より大切な人がいるって事?」 『……れ…り、………とが、…ってこと?』しか聞き取れなかった。地獄耳なのになんで聞こえないんだ、そう言うゲーム設定?主人公耳悪くなる補正かかってる? 「まあいいや。こっちおいでヨハン」 手を離されて先に立ち上がり少し進んでから俺に手を差し出す。 「……え、?」 俺が本を膝に乗せたままおろおろしてると、目が冷ややかになる。 「おいで、早く。ほら、来い」 口調が強くなり、流石にちょっぴり怖すぎた俺は本を置いて立ちロペスの元に駆け寄った。 「いい子だね」 にこりと頬を緩めて俺の頭を撫でるロペス。俺の手を引いて俺を抱っこした。急に目線が高くなったせいで驚いてロペスに抱き付く。 「あ、の…ロペス…?」 「ん?なぁに」 どこへ向かってるんでしょうか。俺は、俺は貴方の心が読めませぬ。 向かったのはお風呂だった。でも俺もロペスも服を着ている。俺溺死させられたりとかする…? 「はい、今から浣腸するよヨハン」 床に降ろされて、俺が戸惑っていると凄く、現実的な言葉が聞こえて来て俺の喉はひゅっと音を鳴らした。 「か、かっか、かんちょー…?」 「嬉しい事に明日は休日だしね。それにしないとできないでしょ?」 「な、っな…何が…」 「セックス」 ロペスはそう言って人差し指と中指の間に親指をぐっと押し込んでみせた。
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