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⑥
更に、後頭部、背中、脇と執ように突く。
「や、やめてくれえ!」
ついに男が音を上げた。
「やめない」
司は、初めて男に向かって声を発した。そして、キッチンテーブルの卵パックを手にすると、生卵を床にうずくまっている男に1個また1個とぶつける。卵は、割れて白身、黄身が飛び散った。
「おねえちゃん、卵じゃ人は死なねえぜ……」
不用意に顔を上げた男の人中を、渾身の力をこめて突く司。
「あががっ!」
その一撃で、男はあお向けになって意識を失った。
再びの静寂。
司は、鍋の卵を取りだした。ゆで卵となっている。ゆっくりと殻をむく。そして一言。
「これは、理不尽な卵……」
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