第一章 小説「異世界小説家と女暗殺者の物語(異世界からの恋文編)」

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第四話 変わる運命(3) 「どうされました? どこか、具合でも悪いんですか?」 「どうされました? どこか、具合でも悪いんですか?」  店の女性店主が、声を掛けてきた。  私はびっくりし、顔を逸らした。 「何でもありません」 「突然、お声がけしてすいません。でも、目に涙を浮かべられて、出入り口の扉を見つめられているので心配になりまして」  気が付かなかった。  ぐるぐると、まとまらない考えをしているだけのつもりだった。 「いえ。御免なさい。ご迷惑おかけしました」  とりあえず礼を言って、店を出ようとした。 「あの、ちょっと待っていただけますか?」  私の手を取り私の目を見つめ、店主は言葉を続けた。 「あなた、好きな方でもいるのかしら?」 (え? なぜ、そんなことを、この人は言うんだ? そんなことは、ないぞ)  しかし、涙が、頬を伝わっていった。 (好きな人? 誰を? 私が?) 「店の奥に休めるところがありますから、そこでゆっくりしていかれませんか?」 「いいえ、大丈夫です。御代は、これで良いですか?」  そうして、店を出ることにした。 「そうですか、わかりました。ですが私で良ければ、お話聞くだけでも聞きますので、いつでもおいでくださいね」  優しい笑顔で、その女性店主は見送ってくれた。 (このお店は、あんな感じで相談相手になったりするから、ここは女性が多いのか?)    いつもの私らしくないことを、また、してしまった。  人前で涙を見せるなんて。 (あいつに会ってから、私は、おかしい)  もう、暗殺者としての私は、あいつに出会った時には、終わっていたんだ。 (でも、私があいつを好きになっているなんて。そんなの、ありえない)  私は、宿に戻った。  考えを整理しようと。  皇国に逃げたのだとわかった時に、潜入して命令を継続しようと考えていた。  しかし、皇国と揉めている状況では、迂闊に潜入してバレた場合、戦争の火種になりかねない。  秘密裏に成功すれば、それでも良いかも知れないが、皇国の守りは固い。  親方様でも、潜入は無理なのだ。  だから、暗殺が失敗することのないよう、親方様は私を選んだ。  その命令で、私を失うことになるとしても。  だが、その私が、この有様だ。  親方様を、失望させたに違いない。    でも。  もう、そうは言ってられない。  聞きたいこともある。  私は、会わなければならないのだ。  今夜、決行しよう。  私は、荷物をまとめ、仮面を付け、服装を着替えて宿を引きはらった。
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