のだま。にっ!

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 青く晴れ渡った空の下、程よい涼けさの風が山本の頬をなでた。夏は終わりを告げつつあり秋の足音が近づいていた。絶好の野球日和だった。 「一番のりっス」  しかしまだグラウンドに人影はいない。強豪校であれば放課後すぐにグラウンドに集まるのは当然だし、後輩が先輩の後に集まるのはもっての他だったが、ここは進学校だ。そこらへんはとても緩かった。 「しゃーないっス」  山本は1人でグラウンド整理を始める。  部員ももう9人を割ってしまっている。人手が足りないので準備は皆でしなくてはならない。2年生の山本も例外ではなかった。夏の甲子園予選はなんとか9人揃っていたのだが、今はもう3年生は引退してしまい部員は2年生が2人と1年生が4人の計6人しかいない。秋の大会は他の部活から助っ人を募るか最悪他校との合同チームで挑むことになるだろう。他の高校と合同チームを組んだ場合、その学校の選手との兼ね合いでポジションが変わったりするのが面倒だったが、山本にとってはむしろそれは望ましいことだった。 「というか合同チームにならないっスかね。捕手マジで大変なんスけど。プロテクター重いしファールチップ痛いし座ってボール取るの怖いし痔になるし」  正捕手の3年生が引退した為山本が新チームの正捕手だった。山本の本職は外野であり捕手なんてやったことなかったのだが、つい口が滑って「小学生のころやったことあるっス」とか言ってしまっため捕手をやるはめになったのだ。やったことあると言っても軟球でも硬球でもないただのゴムボールなのに。後悔しても後の祭りだった。1年生に捕手経験者がおらず、もう1人の2年生である忠野は投手なので消去法で決まってしまった。ちなみに忠野が部長で山本が副部長だ。2年が2人しかいないのでこれも消去法。 「できればライトがいいっス。強いボールが飛んでこないっスからね」  プロであれば左の強打者が充実しているのでライトにも鋭い打球が飛んでくるが高校生だと左の強打者は少ない。ライトに鋭い打球は飛んでくることは比較的少なかった。  もしかすると捕手から解放されるかもしれない。そう考えると山本の気持ちはこの青空のように晴れ渡っていた。 「…でも何か変っスね。このグラウンドやけに整っているっス。まるでもうすでに誰かが整備した跡のような」  そこで山本ははたと気が付いた。青く晴れ渡った空とは対照的に、グラウンドの片隅に置かれているベンチ。その一か所だけはまるで梅雨のようにどんよりと空気が淀んでいる。 「辛い。生きているのが…」 「忠野いたんスか」  そこにいたのは部長の忠野だった。  ベンチに横になって枕を涙で濡らしていた。ベンチに枕なんてないけれど。  どうやら1番にグラウンドにやって来てグラウンドを整理して、ベンチで冷たくなって発見されたようだ。  ・・・ 「先生と先輩ってどういう人なの? 」  俺はフーコに聞いた。  フーコは俺の一卵性双生児の姉だった。現在理由合って男の俺と入れ替わって野球部に所属している。甲子園は女子では参加できないので俺に成り代わって甲子園に出場するためだ。といっても野球部は凄まじく弱いので甲子園に出場するなど夢のまた夢だ。それで本人が納得するならと自愛の精神で協力している。  今日は練習試合の助っ人として彼女のチームで一緒に試合をすることになっていた。俺達が入れ替わっていることがばれないようフーコは俺に、俺はフーコに成り代わり試合をする。つまり俺が女装して試合に参加するということだ。非常にややっこしい。 「先生はあまり野球に興味がないみたいね。でも顧問をしてくれている有難い人よ。興奮するとお姉言葉になるからトオルちゃんって呼ばれているわ」 「トオルって名前なの? 」 「そうよ」  なんとなく想像できる。きっとなよなよっとした感じの人なのだろう。 「先輩は怖い? 」 「怖くはないわ。面白いわよ」 「面白い? 」  意外な答えに首をひねる。 「何? 先輩の話をしているの? 」  なぜか嬉しそうに目をキラキラさせて平田さんが割り込んでいる。どうやら彼女も俺と同じようにフーコに野球部の助っ人を頼まれたようだ。彼女はスポーツ部ではないのだがフーコの頼みを断れなかったのだろう。平田さんはフーコに甘い。そして俺に厳しかった。  平田さんは俺とフーコの幼馴染みにして入れ替わりの秘密の共有者…のはずだったのだが、実は同級生には皆にはバレており、それを俺に気付かせないために日夜工作活動を行っていたヤバい女なのだった。女装してフーコの同級生に混じってびびりながら演じる俺を皆で愉悦部していたらしい。ああ、思い出しただけで吐きそう。平田さんが美人じゃなかったら絶対許さなかったね。ワンチャン付き合えるかなって思ってるから許すけど。付き合いたいから許すけれども、もし仮に告白して断られでもしたら怒りでどうにかなってしまいそうだ。 「これが先輩達の写真なのだけれど」 「え…これって隠し撮り? 」  スマホに収められた数々の写真にフーコがドン引きしている。  平田さんは先輩の写真にうっとりと頬を赤く染めていた。これはもしやNTRってやつか? ワンチャン付き合えるかもしれないからと我慢していた積年の恨みが噴出してしまいそうだ。  ・・・ 「忠野どうしたん? 」  ようやくやってきた顧問の盛脇が山本に聞いた。忠野は相変わらずベンチで息を引き取っている。  かつては生徒の悩みに真っすぐにぶつかる熱血教師がもてはやされたこともあったが今はちょっとしたことで、やれパワハラだやれモラハラだやれ暴力だと騒ぎたてられる。そうなるとリスクはとらないのが賢い生き方だった。生徒の問題は生徒に聞いたほうが手っ取り早い。 「忠野っすか? 部長…いや和田先輩が引退してからずっとあんな感じっす」  和田は引退した前部長だった。3年生は甲子園敗退と共に引退する。そして2年の忠野が部長を引き継いだのだ。 「ああ、忠野は和田に懐いていたからな…」  盛脇は納得して頷いた。 「いや、懐いていたというか…」  山本は歯切れが悪い。 「ずっと和田の背中を追いかけていたからなあ」 「背中と言うかケツを追いかけてたっスね」 「和田も忠野が刺激になって危機感を持ってプレイしていたし」 「確かに先輩も忠野には危機感を感じてたっス」 「和田から直々にキャンプテンを指名されてはりきっていたよな。てっきり和田の穴を埋めようと頑張ると思っていたんだが」 「狙っていたのは先輩のケツの穴だったっスからね」 「…」 「…」  2人の間にしばしの沈黙が流れた。 「忠野はホモなんス」 「そんなことは知っているけれども」 「え!? 知ってたんスか? 」  意外な返答に驚く山本。盛脇のことだからてっきり何も知らないものだと思っていた。  はっきり言って盛脇は皆になめられていた。保護者にも受けがよくない。「あの若造が責任を負いたくないからってヘラヘラしやって」と、責任を負いたくないのが周りの皆に見透かされて呆れられていたのだ。あだ名だってトオルちゃんだった。盛脇徹だから。 「トオルちゃん意外に生徒を見ていたんスね」  ちょっと見直す山本。でも知ってるんなら更衣室とかは別にして欲しかった。忠野の奴、時々野獣のような眼光で着替えをチラ見してきて怖かったし。 「ただの馬鹿じゃなかったんスね」 「勿論よ。これでも俺顧問の先生よ」  盛脇は馬鹿にされたことを怒りもせずに答えた。懐が広くて親しみやすい、つもりなのかもしれないけれど、締めるところは締めないと皆から舐められるばかりなのだった。今回も 「知ってて知らないふりしてたんすか。さすが事なかれ主義の極みっすね。せめて忠野とは更衣室は別にしてほしかったっす。ホモと一緒に着替えさせられるのはきついっす」  悪い方に取られてしまっている。 「別に俺のことを馬鹿だと思うのはいいけど、そんな風に男性が男性を好きになることを揶揄しては言ってはいけないよ。現代は多様性の時代よ。LGBTよ。男が男を好きになったって何ら恥じることはないんよ。俺だって男の方が好きだもん」 「へぇ…そうなんす、て男が好き!?」  山本は突然のカミングアウトに思わず聞き直した。 「そうだよ。だから野球部の顧問になったんだし。本当はラグビーがよかったんだけど高校に野球部ないから」 「ええ…」  ドン引きする山本。身の危険を感じ思わず乙女のように胸元を隠す。興奮するとお姉言葉になることからそういう疑惑はないではなかったが、まさか本当にそうだったとわ。 「性癖は変えられないし上手に付き合えばいいと思うんよ。LGBTだし。子供が好きだから保育士になってもいいと思うんよ。LGBTだし。おっぱいを揉みしだきたくてAEDの腕を磨くのもいいと思うんよ。それで人が救えるなら素晴らしいことじゃない。LGBTだし」 「LGBTと言えば何でも許されると思ってないっすか? どんどんLGBTからかけ離れて行ってるっス。ていうかおっぱいとか完全に関係ないっすよね? 」 「俺ももう少し速く生まれていればその流れに乗れたのに」  盛脇は山本の突っ込みなど聞こえないふりで悟ったように遠くを眺めている。  盛脇は先生の中ではまだ若いがそれでももう30だった。いろいろと情熱も衰えている。 「辻内って可愛いい顔してるよな? 」 「あのカミングアウトの後にその発言は何とも答えにくいっす」  辻内と言うのは1年生部員の名前だった。ポジションは投手兼遊撃手で忠野と同じ。投手と遊撃手は身体能力が高い選手がやるポジションだ。日本では一番身体能力が高い者が投手になりアメリカでは1番身体能力が高い者が遊撃手になる。1年生では1番動きが柔らかな選手だった。 「身構える必要はないよ。俺ももう上がりだ。辻内の顔なんて本来ならドストライクなのに全く反応しなくなってしまった。俺はこれからの人生は真面目に生徒の指導に捧げるよ」 「最初からそうしてくださいっス」  それでは今までは真面目にやってないみたいな言い草だが、まぁ真面目にやってないのは見ていれば分かるので今更なのでつっこまないで置いた。 「辻内といえば人数あわせに双子の姉を連れてくるって言ってたな」  ぬっ、と  唐突に忠野が背後に現れる。 「うわぁお!? 聞いていたっすか? 」  ホモに後ろを取られた恐怖で飛びのく山本。これが夜のプレイなら今のが致命傷になっていただろう。 「怖がることはない。山本は俺のストライクじゃないから。アウトコースギリ外れてるから」 「ギリっスか。危なかったっス…」  そんな馬鹿なことを話しているとようやく1年生たちがマウンドにやってきた。噂を擦れば影と言うやつだ。ガヤガヤと賑やかそうな話声が聞こえてくる。見ればその中でひときわ目を引く美人がいた。あれが辻内の姉なのだろう。 「辻内の姉さんは中学じゃ有名な選手だったらしいっスね。即戦力っス。随分と美人っス」  それは女装した弟などとはつゆ知らず山本は言った。 「いや…あれは」  しかし忠野は怪訝な顔をする。 「…じゃない」  そして盛脇は何か。ゴゴゴゴゴ…という音を背後に背負って興奮していた。 「と、トオルちゃん?」 「上がりじゃない! なんなのこのかつてないトキメキ? しかも相手は女じゃない! 」  あまりの動揺にお姉言葉になってしまっている。これが盛脇の真の姿だった。 「落ち着くっス。相手は女っすよ。あれに欲望をぶつけたら犯罪っス。トオルちゃんは男が好きなんでしょ? 」 「これはもしや普通の人間になれるチャンス?」 「先生ゲイは普通の人間じゃないって言うんですか!? 」 「忠野は黙ってるっス」  カオスな状況に山本は頭を抱えた。 「戦国時代、衆道は武士のたしなみだったの。ということは男は皆潜在的にバイセクシャルなのよ。つまり私も潜在的に女が好きになる可能性が残されているという事」 「目を覚ましてください先生! 女は男を利用することしか頭にない汚い生き物だ! だけど俺達は違う! 損得のない純粋な愛を捧げることができる! 」 「そうね。私もそう思ってきたわ。でも、でもね…男同士じゃ子供は生まれないのよ! 」  ガーン!  それを言われたらお終いだ。忠野はガックリと崩れ落ちるしかなかった。 「私ももう30過ぎだわ。自分の子供を見て見たいのよ」  それだけ良い話に聞こえなくもないがこの流れだとその子供を創る相手となるのは女子高生なわけで… 「くれぐれも犯罪は起こさないで欲しいっス」  山本は冷や汗をかいて突っ込んだ。  ・・・ 「よくきたっスね。俺は山本。野球部副部長っス」  山本はグラウンドにやってきた辻内姉弟と平田の前に進み出た。今の盛脇を女子に近づけるのは危ないので忠野に足止めさせている。 「辻内フーコさんっスね? 話は聞いてるっス」 「本当にいた。語尾に『っす』をつけてる人」 「? 」 「いえ、なんでもないです」  俺は平田さんに聞いた先輩たちの情報を思い出す。  この人は山本先輩。語尾に『ス』をつけて話す面白い人でそして… 「あの、部長さんとはどれくらい付き合ってるんですか? 」  おずおずと平田さんが聞いた。 「ひ、平田さん。そんなこと聞いたら失礼じゃないか…しら? 」  俺は男言葉になりそうなのを慌てて誤魔化す。 「別にいいっスよ。忠野とは中学からの付き合いっス。あいつは野球部のエースだったんスよ」  山本はあっけらかんと答えた。 「中学の頃から」 「やっぱり」  俺達がそんなことを考えているとも知らず。 「辻内さんは経験者らしいから試合にでてもらうっスけど。平田さんは素人なんスよね? 試合に出る必要はないっス。他にも助っ人は呼んであるので」 「…」 「辛かったんですね? 」  平田さんが涙ぐんで言った 「?」  山本は訳が分からずきょとんとした顔をしている。  そう彼は山本副部長、2人しかいない2年生の片割れ。そしてもう一人の先輩、忠野部長は同性愛者であり前部長の和田先輩のことを追いかけてこの高校を選んだのではないか噂されていた。そもそも2年生に野球部が二人しかいないのは忠野と同じ部活になるのを嫌がったからだともいわれている。ではなぜそんな野球部に山本が所属しているのか? 『山本先輩は実は忠野先輩のことを好きなんじゃないかしら? よく見るとこの顔は和田先輩に嫉妬の視線を向けているように見えるわ』  そういうと平田さんはスマホの写真をシャッシャッとスライドさせた。 『なんでこんなにいっぱい隠し撮り写真が…』 『よく見て? この写真、和田先輩を見つめる忠野先輩を悲しそうに見つめている。これは恋する乙女の目だわ』 『そう…なのかな? 』  そういわれるとそんな気もしなくもないけど。 「やっぱりそうだったのね」  山本先輩が行ってしまった後、平田さんはウキウキしながら言った。 「中学の頃から片思いなのね。純愛だわ」  どいつもこいつもホモだらけじゃないか。たまげたなぁと俺は唸った。  ・・・  練習試合はつつがなく行われた。試合は5回10体0のコールド負けだった。5回まで試合ができた実に実りのある試合だった。  正式部員が6人。うち真面に守備ができるのは4人。投手と捕手で2人取られるので内野で守れるのは2人だけ。これでは真面な試合になるほうが無理だった。あまりに守備が終わりすぎていて思い出登板した俺の方が抑えられたくらいだ。だって俺が投げると投手も内野に回れる。大分守備がマシになる。おかげで俺だけ1回無失点だった。 「さすがリトルリーグのエースっスね。女にしておくのが勿体ないっス」  山本が俺を褒める。いや、俺は男なんですけどね… 「あらやだ女性差別。そういうのはいけないわ」 「先生は近づいたら駄目っス」  山本はトオルちゃんを俺から遠ざける。この先生確かに目つきが何か危険な感じがする。芸能界だと別におかまじゃないのにお姉言葉使って仕事をもらうという話を聞いたことがあるが、先生も本性はただのおっさんなのだろう。 「私は1回3分の1、3失点だったのに…」  ずっと野球を続けているのに俺より結果が出なかったフーコはうかない顔だった。でもそれはそれは仕方ないことだ。俺は男でフーコは女…だからではなく前述の通り内野が崩壊していたからだ。ゴロになったらほぼ抜けていたし。1塁なんてボールをそらしまくってたし。  1塁の小久保は太っているから1塁をやっているのだが守備はそれはもう酷いものだった。一応正式部員で野球経験もあるらしいのだが中学の頃はずっと補欠だったらしく素人並みに下手糞だった。俺の時には外野に回されて特に野球経験のないバスケ部の生徒が1塁についたのだがそっちのほうがまだましなくらいだった。 「ていうか草野球の時は1塁に一番上手い人を置くのが鉄則だよな? 」 「私たちは草野球じゃないわ。正式な野球部員よ」 「何その無意味なプライドは…」  一応人並み以上に守れる生徒もいるのだからちゃんとオーダーを組めばここまで惨敗することもないと思うのだが? 俺がそんなことを考えている間にもフーコと平田さんは何かをスケッチブックに絵を書き込んでいる。 「ていうか何書いてるの? 」 「出来たわ」  フーコ達紙芝居をつくっていたらしい。何故紙芝居を? 深く考えてはいけない。だってフーコだし。 「ある日メジャーリーグは日本球界からやってきた野茂が黄金の卵を産んでいるのを見て驚きました。それからも日本球界はイチロー松井大谷さんと黄金の卵を産み、卵を売ったメジャーリーグは金持ちになりました」 「え? いきなり何言ってるの? 」  今までの話から何の脈略もない話に俺は戸惑う。いくらフーコが意味不明でも限度がある。 「いいからいいから」  平田さんはニコニコとほほ笑んでいる。そういえば平田さんは腐った女子であるだけで先輩に気があるわけじゃないらしい。良かったのか良くなかったのか。 「ところがメジャーリーグは日本球界でプレイしてからしか卵を産まない日本球界に物足りなさを感じ、きっと日本球界には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになりました。そして欲を出したメジャーリーグは日本球界で選手を乱獲しました。ところが日本球界に金塊などなく、その上日本球界まで死なせてしまいました」  どうやらそれで話は終わりらしい。一体何が言いたかったのか全くもって意味不明だ。 「それはそうよね。いっぺんに選手を引き抜かれたらリーグのレベルが低下してしまうもの。キューバも台湾も韓国もきっとこうして弱体化してしまったんだわ。野球のレベルを上げるには各国のリーグのレベルの上昇が必要不可欠なのよ」  フーコがうんうんと頷きながら言った。 「これはね。欲張り過ぎて一度に大きな利益を得ようとすると、その利益を生み出す資源まで失ってしまうことがある。利益を生み出す資源をも考慮に入れる事により、長期的に大きな利益を得ることができる。以上ウィキペディアより抜粋という教訓を現しているの。メジャーリーグも今レベルの低下が問題視されているしお互いLossLossの関係なのよ」  そして大真面目にフーコは言った。 「直接メジャーに行っては駄目よ」 「いかないよ! というかいけないよ? 大げさだよたかが練習試合で1回無失点だっただけで! 」  どうやら俺だけが好投したことにより俺がメジャーに直接に行くことを危惧したらしい。そんな馬鹿な。 「あんたがメジャーに行ったら私の夢が叶わなくなるのよ! 貴方がプロ入りしたら時々入れ替わって私が投げるという私の夢が! 」 「そんな無茶な! プロだったら頑張って自分でなればいいだろう? 実力さえあれば女でもプロ入りは可能だよ。俺を巻き込むなよ! 大体その頃には流石に俺も声変わりしているからどっちみち無理だよ! 」 「私聞いたことがあります。声変わりする前に去勢してしまえば声変わりすることがないって」 「平田さんはちょっと黙ってて! 」  平田さんがとんでもないことを言い出す。そんなこと言ったらフーコが真に受けて… 「待って、それは最後の手段だから」  ほら案の定本気にしてる。ていうか全ての現況は平田さんの気がしてきたんですけど? 
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