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第四十一章第一節「戻った絆 フタリの愛」
桜の花びらがひらりと舞い
頬に触れる感触を感じながら
川のせせらぎが聞こえる
河川敷の直ぐ側の草むらで
ナオト「春風が気持ちい〜」
ユウハ「桜がきれいだな。」
オレとユウハのふたりは
寝そべってそよ風を感じていた。
優しい春風に吹かれ…
桜の花びらがひらひらと舞う
穏やかな景色に癒やされ…
オレは気持ち良くなって
過去に話した言葉をふわっと口に出した。
ナオト「チューニビョーヲタクに
なっちゃったオレには
誰ひとりついてくる
オンナはいないよ。」
それにつられてユウハも
ふわっと言葉を漏らす。
ユウハ「よっ、ホントにそうだよな。
でもついてこられる側は
ついてこられる側で
大変なんだろ?」
その言葉を交わしたオレ達は
時の流れに驚き声が重なった。
ふたり「こんな話したのも…あっ…」
ユウハ「…こんな話したのも
もう二年前なんだな!」
ナオト「…もうオレたちも
三年生!ウソでしょ?
なんかオレら変わったっけ?」
百野花高校へ入学する前の
ゲームセンターでの会話から
これまでの日々を思い出して
オレたちは懐かしそうに話を続けた。
ユウハは
明日から始まる三年生の日々と
卒業がおよそ一年後に待つことに
思いをはせたうえで…
ユウハ「なんか卒業なんて
まだまだだよなって思ってたけど
いざ卒業の年になると
あっという間に感じるな。」
「ついにオレ大学生になれるのか
って思うと楽しみ!」
ナオト「オレにとって卒業は
来なくていいのに
ってくらい嬉しさ少なめ!」
「小学校のときも中学生のときも
あまりいい気になれなかったし。」
「今回もおんなじような気分…」
ユウハ「そうかなぁ…
なんでそう思うんだ?」
ナオト「だってさあ
どんだけ仲良くなったって…
時間を一緒に過ごしたって…」
「卒業すればまた
それぞれ別の場所に
行っちゃうだろ。
それがさみしくてさ…」
卒業への不安を口にすると
ユウハはこんな風に答えた。
ユウハ「確かにそうかもなぁ…
でもどれだけ離れていたって
さみしくならないというか…」
「思い出してそれが生きる力になる
そんなくらいの関係に
なっておけば良いじゃん!」
ナオト「そんな風に思える
仲の良い友達なんて…
なかなかできないよ。」
ユウハ「努力すればきっとできるよ。
オレたちの友達の
仲良しカップルみたいに…」
ナオト「確かに…仲良しカップル。」
ユウハ「オレたちもまだまだ
仲良くなれそうだな。」
納得したふりをしたものの
心の中では別の考えがあった。
そんな簡単にいくわけねえだろ…
きっとあのフタリは
オレ達に真似できないくらいの
何かをしてるか何かがあるかなんだよ。
2年経っても変わらぬ成績不良のヤツは
そんなことなくて終わりが来るよな…
そうネガティブに考えてしまった。
卒業が嫌だと言う気持ちを
捨てきれずにいたオレは
フタリの愛がリセットされる
可能性があったのを思い出した。
ナオト「だなっ…えっけど…
モモネってミノリのこと無視して
リュークとって
なってなかったか?」
ユウハ「そういえば…そうだな…」
ナオト「ミノリとモモネ…
どうなったんだろ?」
ユウハ「というかリュークと
どうしてんだろう?」
卒業を目前にして
モモネ周りの複雑な関係が
オレたちの頭をよぎった。
後編》
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