Day0

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Day0

     嶋崎コオ。夫の遼吾、中学生と高校生の二人の息子とアパート暮らし。  3歳ちがいの妹、莉子は未婚で父と暮らしている。二人が住む家は、コオ達とのアパートからさほど離れていない、けれど歩いていくには遠いくらいの微妙な距離だ。車なら15分あれば、確実にたどり着ける距離。    「俺も行こうか?」 父が救急搬送されたので、莉子を拾って病院に行く、と言ったら、遼吾は眠たそうに言った。 「今は、いい。状況よくわからないから。私たち両方行ってもしょうがないかもしれないし。とりあえず、子供達をお願い。」  コオは、そう短く言うと、最小限のものを持って、車に乗った。  夜中から明け方に向かうその時間の道はもちろんガラ空きで、コオは10分で実家にたどり着き、莉子をひろった。病院までは更に10分ほど。その間に莉子は、父が倒れたときの状況を語った。  突然大きなものが落ちたような音がしたこと。  すぐに父の部屋に行ったが、なにか引っかかってドアがすぐには開かなかったこと。 父にドアの外から声をかけたが、不明瞭な答えしかなく、最終的に救急車を呼んだこと。  それは、コオに対して莉子が順序立てて筋道の通った話をした、最後だったかも知れない。
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