幼少期の記憶1〜イグアナの娘

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 コオが子供の頃はおそらく存在すらしなかった 『毒親』という言葉。  今でも『毒親』だ、と断定することには抵抗がある。  暴力を振るわれたわけではないし、大学に入って一人暮らしを始めるまで3食食べさせてもらっていた。  だから(まぁ、毒親要素、ちょっと強めって感じ)という曖昧な言い方でとめておくのが無難なのかもしれない、とコオは思っている。  とはいえ、母の妹・莉子とコオに対する扱いの差は歴然としていた。  可愛い、守らねばいけない莉子ちゃん。莉子ちゃんはお友達がいっぱい。勉強できるよりそっちの方がずっと大事。  コオちゃんは勉強はできるけどお友達づきあいが全然ダメね。本ばかり読んで。都合のいい時に遊んでもらおうとしたって相手になんかしてもらえないわよ?  コオの自己肯定感は、母によって下げられることはあっても上がることなど一度もなかった。    当時、人はいった。  「コオちゃんはしっかりしてるからね。お姉ちゃんだし。」  「お母さん、安心してるのよ。」  コオは当時、それらの言葉が苦痛でならなかったし、母が亡くなるまで続いた。  「コオちゃんは結婚してお子さんもいるしね。」  「お母さん、安心してるのよ。」  「莉子ちゃんは芸術家だから繊細なのよね。お姉ちゃんは肝が座ってるけど。」  どうして私は傷つかないと  傷ついても大丈夫だと、人は思うのだろうか。  どうして私が苦しくないと、思うのだろうか。  手首に残るリストカットの跡を見せれば、良かったのだろうか?  
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