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聖女のたまご
数年前まで、私は聖女様に使える司祭として多くの人々を救っておりました。
神より授かりし力を用い人々の病や怪我を癒すことは、私の生きがいであり、誇りでございました。
神の代行者である聖女様ほどの奇跡は起こせなくとも、私は多くの人々の役に立てている。その自負が私を傲慢にさせたのかもしれません。
傷付いた人々を救いたいあまり、まだ若かった私は生意気にも、教会の掟に背いてしまいました。
力は無限に湧き出てくるものではありません。自らの生命力を癒やしの力に変える我々司祭には、一日に救える人数に限りがございました。
また、司祭にできることは傷口を塞ぐことと悪い部分を取り除くことのみであり、聖女様のように、生きる力を失ったものを救うことはできませんでした。
より多くの人々を生かすためには、諦めなければならない命がありました。
助かる命を助け、助からない命には祈りを。
教会の掟は合理的で、正しいものでした。
けれど、私はその選別という行為が許せなかったのです。
今となっては後悔しております。
たった一人の命を救うために力と時間を費やし、その分だけ私は誰かの命を見殺しにしてしまったのです。
その行いは何者かの密告により、すぐに明るみに出ました。
私は教会に拘束され、裁きを受けました。。
神より授かりし力の剥奪。
それは命を奪われるよりも残酷な仕打ちでした。
私は生きる希望を失ってしまいました。
そして、私は失意のまま、誰一人近寄ることのない黒い森に幽閉されたのでした。
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