追憶

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追憶

「どうして司祭様は、あのような助かる見込みのない子供にばかりかまけているのでしょうか」  脈打つたびに痛むであろう心臓から毒素を取り除き、私は子どもの額に手を当てました。  顔は黄色く、内臓がまともに機能していないことが一目でわかります。  まだ、息をすることさえ苦しそうにしています。  一つ一つ力を注ぎこんだところで、彼女に自分で歩き出せるための体力が残されているかどうかはわかりませんでした。  そういう時は痛みだけを取り除き、安らかに眠れるよう祈りを捧げるべきなのです。  けれど、彼女の目は訴えていました。  死にたくない。生きたいと。  彼女の体は全身を毒に蝕まれていました。誰かが毒を盛ったのではありません。  彼女自身が、空腹に耐えかねて汚染された廃棄物を口にしたのです。  彼女を救わなければ、その日、私は十人の人を救えたかもしれません。  私が救わなかった人の中には、誰かを救うはずだった人がいたかもしれません。  私が見殺しにしたのは、十人だけではない。  教会はそのように判断し、断罪しました。 「せめて、追放される前にあの子の無事を確かめさせてください」  私は這いつくばり、地に頭を擦り付けて懇願致しました。 「あなたにはもう神に授けられし力はありません。会ったところで何もできませんよ」  教会の者は厳しくもやさしく、私にそう告げました。 「それでもいいのです。どうか、あの子に合わせてください」  私自身、何ができると思っていた訳ではありません。  意地になっていたのかもしれません。自分は間違ったことをしていないと、信じたかったのだと思います。 「わかりました。少しだけですよ」  そうして私は、彼女に会うことが叶いました。
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