聖女のたまご

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 (うずくま)った私の背を小さな手が撫でました。  衰えた体に否応なしに力が満ち溢れます。  私の体は罰を受ける前、二十代の頃まで若返ったようでした。  恐ろしいことに、彼女はすでに聖女様とよく似た奇跡の力を有しているのでした。 「司祭様、どうか私をお導き下さい。  私は司祭様のように多くの人々を救いたいのです。  そのためでしたら、どれほど過酷な修行であっても耐えてみせます」  彼女は床に両膝を付き、私の手を取りました。覗き込んできた瞳の色は夜よりも深く、みすぼらしい体からは光を放っているようにさえ見えました。  私は聖女様に逆らうことも、聖女のたまごから目を逸らすこともできませんでした。 「どうぞ、続きをお読みください」  彼女に促され、私は十枚以上続く手紙を読んだのでした。  手紙には、修行の内容について記されておりました。  日が昇る前に起床し、体を清めること。  神に祈りを捧げること。  神の教えを書に起すこと。  森の奥深くにある洞窟に神像を刻むこと。  冷たい湖に身を浸し精神を鎮めること。  私など必要ないと思えるほど、手紙にはなすべきことが羅列されておりました。  そして、それと同じくらい、禁忌が記されておりました。  動物の命を狩ってはならない。  たとえ己の身を守るためだとしても、他の命を傷付けてはならない。  食せるのは植物のみであり、乳でさえも口にしてはならない。  己の身を傷付けてはならない。  火を使用してはならない。  お湯に浸かってはならない。  司祭に逆らってはいけない。  名前を呼んではいけない。  咎人である私以上に、さまざまなものが制限されておりました。
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