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私はたまごの隣に座り、彼女を抱き締めました。
禁忌の中に、弱音を吐いてはいけないとはありませんでした。
「司祭様」
「いいんですよ」
髪を撫でると、彼女は遠慮がちに私の肩に額を擦りつけました。
「私たちは重大な役割を授かりました。私たちがやるべきこと、行ってはいけないことは聖女様から頂いた手紙に多く記されていましたね」
「はい」
「あなたはとても敬虔で、美しい人です。立派に勤めを果たされている」
彼女の目から大粒の涙がこぼれます。
それが地面に落ちると、乾いた砂地に小さな双葉が芽生えました。
「ですが、私たちには記されていないことをする権利があるのです。
弱音を吐いていいのです。泣き叫んでいいのです。
私たちは楽しく歌を歌い、楽器を鳴らし、踊りに興じていいのです」
「司祭様……」
「人は誰もが幸せになる権利を持っているのです」
たまごが微笑むと、空の星々が瞬きました。
まるで世界が彼女を祝福しているかのようでした。
それとも、彼女がその神々しい力で世界を染め上げたのでしょうか。
私はこの日二人で見上げた星空を、決して忘れることはありません。
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