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それから、私たち二人は厳しくも楽しい日々を過ごしました。
そのほとんどが厳しさでしたが、私たちはもう挫けませんでした。
そして、修行の日々にも終わりが訪れました。
それが、今日です。
「司祭様、私は怖いです」
森の奥の洞窟で、私たちは神像の前に並び立ち、祈りを捧げました。
「なにを言っているのですが、ここまで頑張ってきたではありませんか。
後は手紙に記された儀式を終えるだけ、そうすればあなたはかえれるのですよ」
私は不安に震える彼女の手を取りました。
ああ、なぜでしょうか。
その手はとても硬く、私の指を拒んでいるかのようです。
彼女は手を握り返してはくれませんでした。
「ええ、そうです。ここで私は孵ります。私というたまごはここで孵り、聖女様が生まれるのです」
いつのまにか、彼女の頬には見覚えのない線がありました。
これはなんでしょうか。
私は身動ぎひとつしない彼女の顔に手を伸ばしました。
それに触れた時、背筋が凍りました。
段差がある、ざらついている。
爪の当たった部分がポロリと剥がれ落ち、そこからは光が漏れました。
「司祭様、あなたがくださった愛情は私をあたためてくださいました」
「たまご、あなたは本当の意味でたまごだったというのですか?」
「そうだとは思っていましたが、やはり司祭様は私がこうなることをご存じなかったのですね」
たまごは悲しげに笑いました。
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