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4話 溢れだす想い
なんとも不思議な人だ
ゲージの下で眠りだした
わたしは見下ろされると怖い
いつもどこにいても
上からくる視線
帰り道は地面に落ちそうで
ゆらゆらと回るように
水はこぼれ落ちて
どこにあるかさえ
わからない日が当たり前だった
冷たい手に
つめたい視線
慣れてしまえば
楽だったのかもしれない
この人がみせてくれた
景色が 両手で抱えた手に
慣れたくないものに
身をおかざる得なかった
そんな毎日から放たれた
それだけで
今日までいて良かった
寝息をたてている人は
話しかけるとき
必ずそっとすこし下から
話しかけてくる
静かすぎて
びっくりするけれど
煌めきに反応できるように
時折 一滴跳ねるたびに
優しいものに
ふれているようで
わたしと
過ごしていくなかで
またいつか
あの置き場所に
戻されたりするのかな
続かない優しさなら
今の気持ちのままがいい
しかし
あの深い赤をみた以上は
ほおっておきたくない
あの日の空みたいな
茜色とさくら色が混じる
魔法がかかった
空の時間を
そんな色をまた
わたしを通して
みてはくれないだろうか
色を作れないかわりに
彼の心に彩りを見つけたい
きっと奥底に
さらに深いところにあるようで
本当は近くにあるもの
..........................
明日に繋がれていく瞬間を
久しぶりにみていなかった
見上げると君がいる
静かにそっと
こんな夜に一人じゃなくて
良かった
こんな朝にひとりじゃなくて
良かった
見上げなければ
みえない景色がある
つま先から数歩の世界は
平穏そうで孤独なものだから
自分の陰が重なって
光などみえない
だから
気をつけて歩いてきた
ほおっておけなかったのは
いつかの自分も
あんな風に色をかえながら
1言われると10以上
理解しようと
妙に頑張ってたころを
おもいだす
この時の傷をまだ
君に話すには
言葉がみあたらない
自分にたいして
怒ることで
それを忘れないようにしている
そうしないと
悲しみに埋もれてしまう
だけど夢がある
叶えられそうな
いつかの空のような
綺麗な彩で君が染まるように
そんな日を浮かべて
ゲージのしたで夢をみた
「それぞれに描いた未来」
5話 5月3日(水)公開予定
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