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どっちが先?
「たまごが先か、鶏が先か……どっちだと思う?」
「どっちでも良い」
俺の問いに即答した彼氏は、美味そうにフライドチキンにかぶりついている。その隣には冷えた缶ビール。最高の夕飯だ。
「でも、鶏の方が美味しくて好きだから、鶏が先が良い」
「なんだ、それ」
「親子丼も好きだけど」
「食べることから離れなさい」
「食べることが趣味です」
「……俺にいつも、つまみ食いされてるくせに?」
一瞬の間の後、彼氏の顔が真っ赤に染まる。
「馬鹿! 変態!」
「ふふ……なぁ、好きになったのは、俺が先? それともお前?」
「し、知らない!」
ビールに逃げようとする彼氏の手首を、俺はぎゅっと掴んだ。
「俺は好きなものは一番最初に食べるなぁ」
「何の話?」
「たまごと鶏」
「その話はおしまい!」
「一番はお前」
「……馬鹿」
僕もだよって、笑う彼氏にそっとキスをした。
先に恋に落ちたのはどっち?
まぁ、両思いだからどっちでも良いか。
俺は彼氏のくちびるを舐める。
食事中のキスは、スパイスの効いたチキンの味がした。
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