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◇◇◇
同時刻
体がフラフラするなら一緒に風呂に入ろうと優衣香に言ったが、『嫌ですよ』と即答された。
さすがに俺は具合の悪い優衣香をどうにかしようとは思わない。だが、優衣香の姿を見ていると少しだけ不安があった。だから洗面所のドアを少しだけ開け、廊下で椅子に座って、優衣香が風呂から上がるのを待つことにした。
「ここにいるから、何かあったら呼んでね」
「うん、ありがとう」
衣擦れの音がする。
この後は優衣香が風呂の扉を開けて、シャワーを出して、と音が聞こえるはずだが、音がしなくなった。
「優衣ちゃん、どうかした?」
「敬ちゃん……」
「入っていい?」
返事が返ってこない。今すぐドアを開けたいが、返事を待たないと、とも思った。『優衣ちゃん』ともう一度声をかけると同時に、優衣香がまた俺の名を呼んだ。
ドアを開けると、優衣香が裸で蹲っていた。
「優衣ちゃん!」
背を向けて蹲っている優衣香の肩を掴んで抱き起こそうとしたが、ずいぶんと細くなった体に驚いた。
「ごめんね……」
「優衣ちゃん、やっぱり一緒に入ろう」
「でも……」
「いいから」
急いで服を脱ぎ、シャワーを出してから優衣香を抱き起こした。風呂に入り、優衣香の腰に腕を回して、シャワーをかけると、優衣香が俺の肩や腕を見ていることに気づいた。
「どうしたの?」
「……三角筋と、上腕三頭筋と、大胸筋」
「ん? ああ、そうだね」
指先で俺の肌に触れて、笑いながら筋肉の名称を言うのはなぜだろうと思いながら、優衣香の体を洗おうとボディソープに手を伸ばした。
ホディタオルにボディソープを出して、優衣香を引き寄せて、肩越しに泡立てる。どれくらいの強さなら痛くないのか、尋ねながら優衣香の体を洗っていった。だが――。
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