プロローグ

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『あの……それ、買わないの?』 わたしはその日、思い切ってその人に声を掛けた。 「えっ!?いや、それは……。ひょっとして…同じ学校だったり…?」 わたしの声に振り返ったその人は、驚き、困惑、動揺…それら全ての感情が一気に押し寄せたような表情。 『うん…同じ学年。』 「やっぱり…。」 『……。』 「……。」 訪れた沈黙。 『買えばいいのに…。』 「えっ?」 『ゴメンなさい、勝手に。でも、とても欲しそうに見えたから…。』 「凄く欲しい。うん……欲しい。でも、いいのかな?買っても…わたしが?」 泣きそうな顔。 『わたしは何も見てないから…。』 「えっ?」 『何も見てないので大丈夫。じゃあ…。』 「あぁ…うん、ありがとう。」 わたしは、その場をあとにした。 カラッと気持ちのよい、青空の土曜日だった。
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