147人が本棚に入れています
本棚に追加
『あの……それ、買わないの?』
わたしはその日、思い切ってその人に声を掛けた。
「えっ!?いや、それは……。ひょっとして…同じ学校だったり…?」
わたしの声に振り返ったその人は、驚き、困惑、動揺…それら全ての感情が一気に押し寄せたような表情。
『うん…同じ学年。』
「やっぱり…。」
『……。』
「……。」
訪れた沈黙。
『買えばいいのに…。』
「えっ?」
『ゴメンなさい、勝手に。でも、とても欲しそうに見えたから…。』
「凄く欲しい。うん……欲しい。でも、いいのかな?買っても…わたしが?」
泣きそうな顔。
『わたしは何も見てないから…。』
「えっ?」
『何も見てないので大丈夫。じゃあ…。』
「あぁ…うん、ありがとう。」
わたしは、その場をあとにした。
カラッと気持ちのよい、青空の土曜日だった。
最初のコメントを投稿しよう!