妖精たち

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妖精たち

始まりだ 新たな命 誕生だ 卵から小さな妖精が飛び出す。 まだ小さい彼らだが、しっかりと鎧をまとって生まれる。 大聖堂の地下にある一室で、命の誕生を見届けた。上階がまだ明るいのは、ここからでも何となく分かる。 「総長!」 仲間の妖精がやって来た。 「今年の卵は皆、無事に全て孵化しました」 「そうか、皆よく頑張った。まだ食料が残っているだろう。夜まで少し休むといい」 我々は、夜に活動する暗闇の妖精だ。小さい体は敵に狙われ易いため、生まれた時から鎧をまとっている。その鎧は、大人になるにつれて強度は増し、死ぬまで取れない。我々は、妖精と言えども、寿命はある。しかし、先祖代々から何億年という歴史を生き抜いてきた。 暗闇が、静けさを連れてやって来た。聖なる時間だ。我々は、俊敏な動作で仕事にかかる。大聖堂の外に食料を探しに行く者、大聖堂の中で食料を探す者。主に人間が活動しない時間帯に、姿を消しながら仕事をする。 朝になる前に、全ての人数が揃って帰れないこともある。 「総長、メラナウスが戻りませんでした」 「彼は、どこを担当していた?」 「大聖堂の外です」 「そうだったか……」 戻らない者は大抵、ベテランの妖精だった。過信のあまり、姿を消し切れないことが、主な要因だ。 「メラナウス。本当に残念だった」 地下室にいる子供たちに近付いて言った。 「君たちのお父さんが、戻らなかった。おそらくもう、死んでしまった」 悲しいという表現をする子供もいれば、どうして良いか分からないという雰囲気の子供もいた。そんな様子を眺めながら、私も眠りについた。
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